この記事の要点
- AIが、商品ごとに最適な保管ロケーション(棚の番地)と、今週動かすべき商品を判断します。
- 一度決めたら動かさない配置から、出荷の傾向に合わせて置き場所を組み替え続ける倉庫に変わります。
- WMSから出した出荷実績とロケーションのCSVで始め、4〜6週のPoCでピッキングの移動距離などを測ります。
AI棚割・ロケーション最適化は、倉庫のどの棚にどの商品を置くかをAIが判断し、出荷の傾向に合わせて置き場所の見直しを提案するしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、倉庫長や3PLの責任者、現場の改善担当の判断を支えます。この記事では、ロケーション管理の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、AIに任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。
倉庫のロケーション管理で起きていること
多くの倉庫では、ロケーション(保管場所の番地)は商品を受け入れたときに決め、その後はあまり動かしません。動かすにはWMS(倉庫管理システム)の登録を変え、作業者に新しい場所を覚えてもらう必要があるからです。慣れた配置を変えると、しばらくは探す時間が増えるという心配もあります。
一方で、出荷の傾向は季節や販促、取引先の変化で動き続けます。受け入れたときは出荷の少なかった商品が、いつの間にかよく出る商品になっていることもあります。その商品が出荷口から遠い奥の棚や、取りにくい上段に置かれたままだと、ピッキング(注文に合わせて商品を取り出す作業)のたびに長い距離を歩くことになります。
置き場所の合わなさは、移動距離のほかにも表れます。よく出る商品を小さな棚に置いていると、補充の回数が増えます。形や品番の似た商品が隣り合っていると、取り違え(誤ピック)が起きやすくなります。
見直しが必要なことは、現場の多くの人が感じています。ただ、どの商品をどこへ動かせば効果が大きいのかを比べる材料がなく、ベテランの経験と、棚卸しなど作業の区切りに頼りがちです。「今週、何を動かすべきか」を毎週人の手で判断し続けるのは、現実的ではありません。
AI棚割・ロケーション最適化が判断すること
AIが判断するのは「商品ごとの最適な保管ロケーション」です。判断のパターンでいえば「資源の配置」、つまり棚という限られた資源を、どの商品にどう割り当てるかを決める判断にあたります。
AIは、出荷の実績、商品の大きさや重さ、棚の寸法と耐荷重、補充の頻度などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成するのではなく、決めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。
| 答えの型 | この業務での問い |
|---|---|
| はい/いいえ | この商品を、この棚に置けるか。今週移動すべきか |
| どれを選ぶか | 候補の棚のうち、どこに置くか |
| どの程度か | 各移動案の期待効果・適合度・優先度 |
答えが型で返ってくるため、そのまま移動リストやWMSの登録作業につなげられます。人が一から配置を考えるのではなく、AIが出した候補を人が選んで決める流れに変わります。
導入後の倉庫の1日
たとえば、日用品を扱う倉庫で、出荷口に近いエリアから使い始めた場合を考えてみます。
朝、改善担当は画面で今週の移動案を確かめます。移動案は期待効果の大きい順に並んでいて、「この商品を出荷口に近い中段へ」「この2つは品番が似ているので離す」といった提案に、それぞれ確信度が付いています。改善担当は上から順に目を通し、移動するものに印を付けます。
日中、出荷が落ち着く時間帯に、作業者が印の付いた商品を移動します。移動先はハンディ端末に表示され、移動が終わるとロケーションの登録も更新されます。一度に全部を動かすのではなく、効果の大きい少数の商品から毎週少しずつ動かすので、作業者が場所を覚え直す負担も小さく済みます。
夕方、倉庫長はその週のピッキングの実績を確かめます。移動した商品のまわりで歩く距離や補充の回数がどう変わったかを指標で見て、翌週の移動案を見るときの判断材料にします。配置の見直しが、年に数回の大仕事から、毎週の小さな改善に変わります。
AIに任せる範囲をどう決めるか
AIの答えには確信度が付きます。この確信度で、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを決めます。
- 確信度95%以上:同じ通路の中で段を入れ替えるなど、影響が小さく、条件を確実に満たす移動案です。自動で移動リストに入れます。
- 確信度70〜95%:別のエリアへ動かす案など、作業量や周りへの影響が大きいものです。改善担当が確認してから決めます。
- 確信度70%未満:新商品や販促前の商品など過去のデータが少ないもの、温度帯や重さの条件が特殊なものです。倉庫長や専門の担当者が判断します。
この閾値は最初から決め打ちにせず、PoC(本格導入の前に効果を確かめる試行)で確かめて決めます。はじめはすべての案を人が確認し、AIの答えと人の判断がどれくらい一致するかを見てから、任せる範囲を広げていくのが安全です。
小さく始める手順
いま使っているWMSは入れ替えません。AIはWMSの上にのる「判断レイヤー」として入り、まずは手元のCSVから始められます。
- WMSから出荷実績・ロケーション・商品マスターをCSVで書き出します。対象は1つのエリアや1つの温度帯などに絞ります。
- AIの移動案と、現場の担当者の判断を机上で比べます。この段階では商品を実際には動かしません。
- 合意できた移動案から実際に動かし、指標の変化を確かめます。
PoCの期間は4〜6週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。
- ピック1回あたりの移動距離
- 時間あたりのピック数
- 補充の回数
- 誤ピックの件数
- 棚の利用率
目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから一緒に決めます。効果が確かめられた範囲を広げ、ほかのエリアや業務へ育てていく進め方です。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。
物流・倉庫の判断を支えるほかのAI
倉庫と配送の現場には、ロケーションのほかにも、毎日くり返される判断があります。たとえば、物量の見込みに合わせて必要な人数を決める「倉庫人員AI」、車両と運転手の組み合わせを先に出す「AI配車」、遅れそうな便に先回りして手を打つ「配送遅延AI」などです。どの判断から始めるかは、現場で迷う時間が長い業務から選ぶのが近道です。
よくある質問
いま使っているWMSは入れ替える必要がありますか
入れ替える必要はありません。AIはWMSの上にのる判断レイヤーとして入り、まずはWMSから書き出したCSVで始められます。
どのようなデータが必要ですか
出荷の実績、いまのロケーション、商品マスター(大きさや重さなど)が基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で足りないデータを確かめます。
どのくらいの期間で試せますか
PoCは4〜6週が目安です。週ごとに結果を見ながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。
本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。
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