この記事の要点
- AI(人工知能)は、障害の原因の候補と最初に対応する担当者を、確率と確信度つきで判断します。
- 企業の障害対応は、関係者を集めて原因を探す方式から、AIが原因の候補と担当者をすぐに示す方式へ変わります。
- 運用の担当者は、過去の障害記録やアラートのCSV(表形式のデータファイル)から始め、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で初動の速さなどを測ります。
AI障害対応は、システム障害が起きたときに、原因の候補と最初に対応すべき担当者をAIが判断し、振り分ける仕組みです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS(SaaS:インターネット経由で利用するソフトウェア)の一つです。情報システム部門の責任者、運用の担当者、障害対応の当番を担う技術者の判断を支えます。本記事では、障害対応の現場で起きていること、AIが判断すること、障害発生後の流れ、任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。
障害対応の現場で起きていること
システムに障害が起きると、運用の担当者は、まず関係者を集めて状況を共有します。原因がアプリケーションにあるのか、データベースやネットワークにあるのか、直前の変更によるものなのかは、その時点では分かりません。そのため、複数のチームの担当者が同時に画面とログを見比べ、原因を探すことになります。

こうした進め方では、初動に時間がかかります。運用の担当者が対応すべき相手を探す時間、状況を口頭で説明する時間、同じ調査を複数の担当者が重ねて行う時間が、いずれも復旧までの時間に含まれるからです。夜間や休日には、当番の担当者が1人で判断を迫られることもあります。
過去に似た障害があっても、記録は障害報告書やチャットの履歴に分かれて残っています。担当者が記憶を頼りに記録を探せるかどうかで、初動の速さが変わります。ベテランの担当者に連絡が集中し、その担当者が不在だと対応が止まるという課題も生じます。
運用の担当者にとって本当に必要なのは、調査の前に「原因はこのあたりが疑わしく、まずこの担当者が見るべきだ」という見立てを得ることです。企業がこの見立てを毎回担当者の経験だけで立てるのは、現実的ではありません。

AI障害対応が判断すること
AIが判断するのは「原因の候補」と「最初に対応する担当者」です。判断の型で分類すると「振り分け」、すなわち誰に、どこへ回すかを定める判断に当たります。
AIは、アラートの内容、障害が起きた時刻、直前の変更の履歴、過去の障害記録などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成せず、あらかじめ定めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。
| 答えの型 | この業務での問い |
|---|---|
| はい/いいえ | この障害は、直前の変更が原因か。緊急の呼び出しが必要か |
| どれを選ぶか | 原因の候補のうち、どれが最も疑わしいか。どの担当者が最初に対応するか |
| どの程度か | 障害の影響の大きさと、対応の優先度 |
AIの答えは型で返るため、企業はその答えをそのまま担当者への通知や、障害管理の起票につなげられます。担当者は一から原因を探すのではなく、AIが示した候補を確認して判断する流れに変わります。
障害発生から復旧までの流れ
たとえば、複数のシステムを運用する情報システム部門で、夜間にアラートが発生した場合を想定します。
深夜、監視ツールがアラートを出すと、AIは直前の変更の履歴や過去の似た障害と照らし合わせます。そして「データベースの接続数の上限が原因である可能性が高い」という候補と、最初に対応すべき担当者を、確信度とともに示します。AIは、この候補と根拠を、当番の技術者へ一緒に通知します。
早朝、当番の技術者は通知を確認し、示された候補の調査から始めます。関係者全員を呼び出す前に原因の見当がついているため、技術者は調査の範囲を絞り込めます。必要な場合に限って、技術者はAIが示した別の担当者に連絡を取ります。
日中、運用の担当者は、障害の経緯と対応の記録を確認します。担当者がAIの候補の当否を記録に残すことで、次の障害での判断の精度が高まります。責任者は、その週の障害の傾向と初動にかかった時間を確認し、体制の見直しに役立てます。

AIに任せる範囲をどう決めるか
AIの答えには確信度が付きます。企業は、この確信度によって、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを定めます。
- 確信度95%以上:過去に何度も起きた障害で、原因と担当者がほぼ決まっているものです。AIが担当者へ自動で通知し、起票まで進めます。
- 確信度70〜95%:原因の候補が複数あるものや、複数のチームにまたがるものです。当番の技術者が候補を確認してから、担当者を決定します。
- 確信度70%未満:初めて発生する障害や、影響が広範囲に及ぶ可能性があるものです。責任者や専門の技術者が判断します。
この閾(しきい)値は最初から決め打ちにせず、PoCで検証して定めます。企業は、はじめはすべての案を担当者が確認し、AIの答えと人の判断がどの程度一致するかを見てから、任せる範囲を広げていく進め方が安全です。復旧作業そのものは、人の承認を前提に設計します。

小さく始める手順
企業は、現在使っている監視ツールや障害管理のシステムを入れ替える必要はありません。AIはそれらの上に加わる「判断レイヤー」として導入でき、まず手元のCSVから始められます。
- 担当者が、障害管理のシステムから、過去の障害記録とアラートの履歴をCSVで書き出します。対象は、特定のシステムや特定のチームに絞ります。
- 担当者は、AIが示す原因の候補と担当者を、過去の障害での実際の結果と、机上で比較します。この段階では、実際の通知は行いません。
- 一致の状況を確認したうえで、AIが当番の技術者に候補を通知し、技術者は実際の対応で使いながら指標の変化を確認します。
PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。
- 初動までの時間
- 原因の特定までの時間
- 担当者の振り分けの一致率
- 呼び出した関係者の人数
- 障害の再発の件数
目標とする値は、PoCの前に現状を測定したうえで、クラスフォックスと企業が一緒に定めます。効果を確認できた範囲から、ほかのシステムやチームへ広げていきます。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。

セキュリティ・IT運用の判断を支えるほかのAI
IT(情報技術)運用の現場には、障害対応のほかにも、毎日くり返される判断があります。たとえば、ログから異常を見つけ出す「AIログ監視」、セキュリティの脅威を見極める「AI SOC」(SOC:セキュリティ監視の拠点)などです。クラウドの運用を支える「AI CloudOps」もあります。企業がどの判断から始めるかは、担当者が判断に迷う時間の長い業務から選ぶのが近道です。
よくある質問
いま使っている監視ツールは入れ替える必要がありますか
入れ替える必要はありません。AIは既存のシステムの上に加わる判断レイヤーとして導入でき、まず手元から書き出したCSVで始められます。
どのようなデータが必要ですか
過去の障害記録、アラートの履歴、担当者の対応の記録が基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で足りないデータを確認します。
どのくらいの期間で試せますか
PoCは3〜8週が目安です。クラスフォックスと企業が、週ごとに結果を確認しながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。
トップ画像の写真:Photo by Albert Stoynov on Unsplash
本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。
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