この記事の要点
- AIが、案件と顧客の状態から「次に何をするか」と「どの案件に動くべきか」を確率と確信度つきで判断します。
- 担当者が一人で次の一手を悩む場面が減り、営業責任者は優先すべき案件を共通の物差しで見られるようになります。
- 手元のCSVから始められ、PoC(小さな試験導入)の期間は3〜5週が目安です。
次アクションAIは、案件と顧客の状態をもとに、次に取るべき営業アクションと優先すべき案件をAIが判断し、営業担当に示すしくみです。営業責任者、営業担当、インサイドセールス(見込み客への電話・メールで商談の入口をつくる役割)が、同じ基準で動けるようになります。この記事では、どんな現場のどんな判断に効くのか、どう小さく始めるのかを説明します。
業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。営業の「次の一手」は、その最初の題材として取り組みやすい業務のひとつです。
営業の次の一手を一人で悩む現場で起きていること
営業の現場では、案件が増えるほど「次に何をするか」の判断が担当者の頭の中に溜まっていきます。CRM(顧客管理システム)には、商談の履歴や金額、次回の予定が入力されています。しかし、そのデータを見て、いま電話をするべきか、提案書を送るべきかを決めるのは、結局のところ担当者の経験と勘です。
図:営業の次の一手を決めるやり方の比べ方(イメージ)
たとえば、数十件の案件を同時に持つ営業担当を考えてみます。朝一番にCRMを開いても、どの案件から手をつけるべきかは一覧からは分かりません。気になる案件から連絡し、気づけば別の案件が何週間も止まっていた、ということが起こります。
営業責任者の側にも悩みがあります。週次の会議で案件の状況を聞いても、「順調です」という報告の裏で失注の気配が進んでいるかもしれません。どの案件に上長が同席すべきか、誰に支援を入れるべきかを、報告の言葉だけで見分けるのは簡単ではありません。
インサイドセールスも同じです。見込み客に連絡を入れるタイミングや手段は、担当者ごとの感覚で決まりがちです。結果として、活動の量は多いのに、商談につながる活動とそうでない活動の見分けがつきにくくなります。
次アクションAIが判断すること
次アクションAIが扱うのは、Next Best Action(いま取るべき最善の行動)と呼ばれる判断です。判断のパターンでいえば「次の一手」にあたり、問いは「次に何をするか」です。文章を作るAIではなく、業務の判断だけを確率と確信度つきで返すAI(Decision AI)として働きます。
この業務では、答えの型が次の3つに対応します。
| 答えの型 | この業務での問い |
|---|---|
| はい/いいえ | 今この案件に動くべきか/失注リスクは高いか |
| どれを選ぶか | 電話・メール・訪問・提案・保留・上長支援のどれか |
| どの程度か | 案件の優先度・成約可能性・停滞リスク |
図:次アクションAIが判断する3つの答えの型
導入後の1日:営業担当と営業責任者のシーン
ここからは、あくまで仮定の場面です。クラスフォックスが設計した活用構想として、導入後の1日を時間の流れで描いてみます。
朝、営業担当がCRMを開くと、案件の一覧が優先度の順に並んでいます。各案件の横には、「電話」「提案」「保留」といった次のアクションの候補と、AIの確信度が添えられています。担当者は、何から手をつけるかを悩む時間を使わずに、一日の動きを決められます。
図:優先度の高い順に案件が並ぶ画面のイメージ(数値は架空のイメージです)
午前中、インサイドセールスは、成約可能性が高いと判断された見込み客に電話をかけます。反対に、いまは連絡しても反応が薄いと判断された相手には、メールだけを送ります。手段の選び方に、担当者ごとのばらつきが出にくくなります。
日中、ある案件で「停滞リスクが高い」という表示が出ます。最後のやり取りから間が空き、提案書を送ったまま止まっている状態です。担当者は、AIが示した「訪問」という候補をもとに、先方に会う約束を取りにいきます。
夕方、営業責任者は、確信度が低く担当者だけでは判断しにくい案件を確認します。AIが「上長支援」を勧めている案件には、同席や商談の組み立ての支援を入れます。会議で全案件を一件ずつ聞かなくても、手を貸すべき案件が見えるようになります。
図:次アクションAIを使う営業の1日の流れ(活用構想のイメージ)
一日の終わりに、担当者が実際に取った行動がCRMに記録されます。AIの判断と実際の結果がたまっていくので、PoCのあとも判断の精度を見直しやすくなります。
AIに任せる範囲を確信度で決める
Decision AIは、判断に確信度をつけて返します。この確信度に応じて、任せる範囲を3段階に分けます。閾値(段階を分ける境目)は、PoCで確かめて決めます。
- 95%以上:自動で処理します。たとえば、定型のフォローメールの送付や、優先度の並べ替えが当てはまります。
- 70〜95%:担当者が確認します。AIが「提案」を勧めていても、担当者が顧客の状況を見て、最終的に実行するかを決めます。
- 70%未満:上長や専門家に回します。大型の案件や、失注リスクが読みにくい案件は、営業責任者が一緒に判断します。
図:確信度で任せる範囲を決める考え方(閾値はPoCで確かめて決めます)
営業は、顧客との関係や最終的な見極めが大きな部分を占める業務です。そのため、人の承認を前提に設計し、AIは「迷いを減らす相談役」として使います。いきなり全部を自動化するのではなく、確認が要る範囲から始めて、成果を見ながら広げていきます。
次アクションAIを小さく始める手順
始めるときに、既存のCRMや営業支援システムを入れ替える必要はありません。いまの仕組みの上にのる「判断レイヤー」として、手元のCSVから始められます。
最初に用意するのは、過去の案件の記録です。案件の段階、顧客の属性、これまでの活動履歴、受注か失注かの結果といった項目があれば、判断のもとになります。完全に整ったデータでなくてもかまいません。足りない項目は、PoCの中で何が必要かを一緒に見極めます。
PoCの期間は、3〜5週が目安です。最初の週にデータと判断したいことを整理し、そのあとでAIの判断を過去の案件と照らし合わせて確かめます。最後に、確信度の閾値と任せる範囲を決めます。
PoCでは、効果を次の指標で測ります。数値の目標は、貴社のデータを見てから一緒に決めます。
- 商談化率
- 案件の進む速さ
- 失注率
- 活動あたりの成果
- 入力・判断の時間
図:PoCの進め方と測る指標(数値の目標は、データを見てから決めます)
PoCで手応えがあれば、Vertical AI SaaS(業界や業務に合わせて作る専用のAI SaaS)として、1業務から小さく育てていきます。初期費用は0円で、月額は10万円(税別)からです。営業の次の一手という身近な判断から始めることが、AXを現場に根づかせる近道になります。
よくある質問
いま使っているCRMはそのまま使えますか
はい、入れ替える必要はありません。次アクションAIは、既存のCRMや営業支援システムの上にのる判断レイヤーとして入れます。まずは手元のCSVから始められます。
営業の判断をAIに任せて大丈夫ですか
確信度に応じて、任せる範囲を段階的に決めます。確信度が高いものだけを自動で処理し、中間は担当者が確認し、低いものは上長に回します。最終判断が必要な業務は、人の承認を前提に設計します。
どのくらいの期間で試せますか
PoCの期間は、3〜5週が目安です。過去の案件のデータでAIの判断を確かめ、任せる範囲を決めるところまでを小さく試せます。
本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。
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