この記事の要点
- AIが、届いた問い合わせの種類を判断し、どの担当へ回すかを確信度つきで返します。
- 一件ずつ読んで担当を決める窓口から、AIが仕分けて迷う問い合わせだけを人が読む窓口に変わります。
- 受付履歴のCSVから始め、3〜8週のPoCで仕分けの一致率や初動までの時間などを測ります。
配送問い合わせAIは、荷主や受取人から届く配送の問い合わせをAIが分類し、担当の振り分けを確信度つきで判断するしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、カスタマーサポートの責任者、配車係、運行管理者、倉庫の出荷担当の仕事を支えます。この記事では、問い合わせ窓口で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。
配送の問い合わせ対応で起きていること
配送の現場には、毎日さまざまな問い合わせが届きます。「荷物がまだ届かない」「届け先を変えたい」「破損していた」「集荷の時間を変えたい」「請求の金額が合わない」といった内容です。電話、メール、Webフォーム、ときにはFAXと、入り口もばらばらです。
多くの窓口では、受付の担当者が一件ずつ読み、内容を見て担当を決めています。遅延の問い合わせなら配車係へ、破損なら運行管理者や品質の担当へ、請求なら経理へ、という具合です。この「読んで決める」作業が、窓口の時間の多くを占めています。
困るのは、問い合わせが一つの文面に複数の用件を含むときです。「届かないうえに、箱が潰れていた」という一通は、遅延と破損のどちらの担当にも関わります。振り分けを間違えると、担当の間でたらいまわしになり、受取人は同じ説明を何度もくり返すことになります。
繁忙期や天候の乱れで遅延が増えた日には、問い合わせが一気に増えます。急ぎの案件ほど読むのが後回しになり、気づいたときには時間が過ぎていることもあります。仕分けの精度が、人の経験と、その日の混み具合に左右されてしまうのです。
配送問い合わせAIが判断すること
AIが判断するのは「問い合わせ分類」です。判断のパターンでいえば「振り分け」、つまり誰・どこへ回すかを決める判断にあたります。
AIは、問い合わせの文面、荷物の状況、受付の経路、過去の対応履歴などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成するのではなく、決めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。
| 答えの型 | この業務での問い |
|---|---|
| はい/いいえ | この問い合わせは、至急の対応が必要か。複数の用件を含んでいるか |
| どれを選ぶか | 遅延・破損・届け先変更・集荷依頼・請求のうち、どの種類で、どの担当に回すか |
| どの程度か | 対応の緊急度と、分類の確からしさ |
答えが型で返ってくるため、そのまま受付システムの担当欄や優先度の欄につなげられます。人が一通ずつ読んで決めるのではなく、AIが出した仕分け案を、人が必要なものだけ見直す流れに変わります。
導入後の問い合わせ窓口の1日
たとえば、複数の荷主の荷物を運ぶ運送会社の窓口を考えてみます。まずは、遅延に関する問い合わせだけを対象に使い始めた場合です。
朝、受付の担当者が画面を開くと、夜のあいだに届いた問い合わせが、種類と担当ごとに仕分けられています。それぞれに緊急度と確信度が付いていて、至急のものは上に並びます。担当者は、確信度の高い案件を流し見て、そのまま各担当へ回します。
日中、配車係のもとには、遅延の問い合わせだけがまとまって届きます。自分の担当ではない破損や請求の問い合わせが混ざらないので、配送の状況を確かめて返事を考える作業に集中できます。複数の用件を含む問い合わせは「要確認」の印が付き、受付の担当者が内容を読んで、必要な担当に分けて回します。
夕方、窓口の責任者はその日の仕分けを振り返ります。AIの案と人の判断が違った案件を見て、その理由を確かめます。たとえば、新しい取引先の言い回しが原因だったなら、翌日からの判断に反映する材料にします。窓口の仕分けが、担当者個人の感覚から、見直せる記録に変わっていきます。
AIに任せる範囲をどう決めるか
AIの答えには確信度が付きます。この確信度で、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを決めます。
- 確信度95%以上:「届け先の住所変更」のように、用件がはっきりした定型の問い合わせです。自動で担当に回します。
- 確信度70〜95%:用件が似ていて判断が分かれやすいものです。受付の担当者が仕分け案を確認してから回します。
- 確信度70%未満:複数の用件が混ざっているものや、事故・クレームにつながりそうなものです。窓口の責任者や専門の担当者が読みます。
この閾値は最初から決め打ちにせず、PoC(本格導入の前に効果を確かめる試行)で確かめて決めます。はじめはすべての仕分け案を人が確認し、AIの答えと人の判断がどれくらい一致するかを見てから、任せる範囲を広げていくのが安全です。
なお、お詫びや補償の話を含む返答は、人が責任を持って行う業務です。AIが担うのは仕分けと優先度の判断までで、最終的な対応は人の承認を前提に設計します。
小さく始める手順
いま使っている受付システムや配送管理のシステムは入れ替えません。AIはそれらの上にのる「判断レイヤー」として入り、まずは手元のCSVから始められます。
- 受付の履歴を、問い合わせの内容、振り分け先、対応にかかった時間とあわせてCSVで書き出します。対象は遅延の問い合わせなど、1つの種類に絞ります。
- AIの仕分け案と、窓口の担当者の判断を机上で比べます。この段階では、実際の振り分けは変えません。
- 合意できた種類から実際の窓口に入れ、指標の変化を確かめます。
PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。
- 仕分けの一致率(AIの案と人の判断が合った割合)
- 問い合わせを受けてから担当に届くまでの時間
- 担当を回し直した件数
- 一次対応までの時間
- 人が読み直した問い合わせの割合
目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから一緒に決めます。効果が確かめられた範囲を広げ、ほかの種類の問い合わせや別の窓口へ育てていく進め方です。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。
物流・倉庫の判断を支えるほかのAI
配送の現場には、問い合わせの仕分けのほかにも、毎日くり返される判断があります。たとえば、遅れそうな便に先回りして手を打つ「配送遅延AI」、誤配送のリスクを出荷前に見つける「誤配送AI」、荷主ごとの対応の順番を決める「荷主優先度AI」などです。問い合わせの多い種類から逆算して、どの判断から始めるかを選ぶのが近道です。
よくある質問
いま使っている受付システムは入れ替える必要がありますか
入れ替える必要はありません。AIは既存のシステムの上にのる判断レイヤーとして入り、まずは受付履歴のCSVで始められます。
どのようなデータが必要ですか
過去の問い合わせの内容と、実際に回した担当の記録が基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で足りないデータを確かめます。
どのくらいの期間で試せますか
PoCは3〜8週が目安です。週ごとに結果を見ながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。
本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。
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