2010年後期以降、デジタルシフト、デジタルトランスフォーメーション(=DX)というキーワードを身近に聞くことが多くなってきました。
しかし、実際の現場ではどのようなDX化が行われているのか、それらDXを推進、実現していくプロジェクト(=DXプロジェクト)はどのようなに行われ、これまでのIT分野におけるプロジェクトとは何が異なり、何が難しいのか、本記事ではそれらについて簡単に触れていきたいと思います。
DXプロジェクトとは?
まずDXプロジェクトを語るためには、「DX」が何なのかを改めておさらいしておく必要があります。
「DX(=デジタルトランスフォーメーション)」とは、これまでのITツールを活用した紙からデータへの「デジタル化」といったものだけではなく、さらにAI・クラウド・IoT等の最先端の技術を活用しつつ、オンラインとオフライン両方における革新的なユーザ体験(=UX)を実現していくことをそのように称しており、筆者自身もそのように理解しています(※)。
そして、それらDXを実際の様々な現場環境に実現していくための推進プロジェクトを「DXプロジェクト」と称しています。
※デジタルトランスフォーメーションの定義については、多方面で様々な定義がなされておりますので細かい解釈に差があることご了承ください。
DXプロジェクトではどのようなことをやるのか?
結論からお伝えしますと、小売・物流・教育・金融・医療・エンターテイメントなど、様々な事業ドメイン・分野においてDXプロジェクトが存在しておりプロジェクトが進行しています。
DXプロジェクトの事例紹介
DXプロジェクトに活用されている技術をベースに、事例を紹介していきたいと思います。
AI・ビッグデータ
膨大量のデータを活用した統計的な分析したり、ディープラーニング等を用いて学習されたAIモデルを作り出し、それらを用いることでこれまで人間が行っていたアクションを、自動化・効率化・省人化していく、といった活動がなされています。
従来のITシステムとDX化されたシステムの比較として、お店での買い物における「Aさんがオレンジを購入した」というケースを例にしてみましょう。
これまでは、「Aさんがオレンジを買った」という購入履歴を蓄積していくに留まっていたのに対し、AI・ビッグデータを活用したDXでは、それら蓄積したデータを活用し、「オレンジを買ったAさんは、他の食材や関連レシピの食材にも興味がありそう、他のお客さんはこんな食材も買っていそう」といった予測をしレコメンドしていく、ということが実現されています。
IoT・クラウド
IoT(アイオーティー)とは、Internet of Thing(モノのインターネット)のことを指し、センシングデバイスや小型コンピュータなどを活用しながら、オフラインのリアル空間における様々な情報をネットワークを経由して送信しクラウド内に蓄積します。クラウド側からデータをリアル空間に対して反映していくことも可能です。
さらに、クラウド内に保持されたそれらのデータは、API等を経由して他のアプリケーション(Webサイト、スマホアプリ、など)に反映することも可能です。
先ほどの「お店でオレンジを買ったAさん」の場合、DX化された店舗側では、IoTデバイス経由で店内行動や購買履歴データを取得し、それらをクラウド内で蓄積・データ処理することで店舗スマホアプリや、店内デジタルサイネージ上の表示に応用される、といったことが実現できます。
DXプロジェクトはなぜ難しいのか?
上記のような事例でもご紹介したようなDXプロジェクトの推進ですが、簡単に実現できているかというと決してそうとは限りません。これまでのITプロジェクトと比較すると難易度が高いものとなっています。
DXプロジェクトが難しい要因は様々ありますが、例としては以下のようなものが考えられます。
- IoT・ハードウェアが関連する
- ビッグデータ・AIが関連する
- リアル(オフライン)空間が関連する
- 社内の組織体制が整備されていない
IoT・ハードウェアが関連する
ソフトウェアのみで完結できるソリューションと比較すると、IoTやハードウェアを活用するDXプロジェクトでは、それらの機器選定や要件策定が重要となっていきます。
ソフトウェア・クラウド側との連携をどのように実現していくかという設計や、導入後の運用内容についても注意深く配慮してプロジェクトを進行していくことが必要となります。
AI・ビッグデータが関連する
AIやビッグデータが必要となるDXプロジェクトでは、まずそれらを収集・分析し、AIモデルを作り上げることも重要となり従来のITシステムのプロジェクトには存在しない工程の進行が必要となります。
また、AIが作り出すアウトプットに関しては、機械学習やディープラーニングなどの技術により作り出された結果であり、単純な計算式により算出された結果ではなく、ゼロイチでの確実な判定や認識が返ってくるものでもありません。
そうしたAIリテラシーを把握した上で、どのようなDX化を成すことができるのかをよく考えていきながら進行していく必要があります。
オフライン環境が関連する
オンラインで完結するシステムではなく、実際の屋内店舗や屋外で行われる様々なリアル空間におけるDX化を実現していく場合は、それらオフライン環境の状況も考慮していくケースがあります。
例えば、店内の棚配置などのレイアウトの変化、朝昼夜の時間による明るさの変化、気温・湿度の変化、人の混雑状況の変化、ユーザ行動の変化等、オフライン環境における様々な状況をオンラインと連携し、クラウド上で管理されデータの可視化が行われます。
リアル空間(オフライン環境)の変化により、AIの結果にも影響する可能性もあり得る他、設置するIoTデバイスやハードウェア機器の設計仕様にも影響する重要なポイントとなっていきます。また、施設の設備によっては設置そのものが難しいケースなども考えられるため入念な現場確認も求められるため、注意が必要です。
DXを推進するための組織体制が整備されていない
上記3点については、技術的な観点におけるDX推進の難しさについて触れさせていただきましたが、実際のところはこの問題が最も大きい課題ではないである企業が多いのではないでしょうか。
DX化推進のためには、社内の各部署・スタッフたちと情報連携しながら進めていく必要があります。
しかし、そうした動きを行っていく専任チームが存在しない、対応できる社員がいない、ということがこのDX化推進を停滞させてしまう大きな要因にもなっています。
DX化にはITリテラシーの高いリソースをアサインすることはもちろん必要ですが、それと同時に、社内の組織改革を行っていく動きも同時並行で進行させていかなければなりません。
まとめ
以上のように、今回の記事ではDXプロジェクトの推進が従来のITプロジェクトと比較して難しいものなのか?について、簡単に触れさせていただきました。AI・IoT・クラウドなどを活用した場合のプロジェクトでは、配慮しなければならない要素が多く存在することが少しご理解いただけたら幸いです。
また、DXプロジェクトはこの他にも様々な技術要素を応用したプロジェクトも多く存在しています。実現していきたい革新的なソリューションを生み出していくにはどうしていくべきか、よく検討してプロジェクト進行を行っていくことが非常に重要です。
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