DX推進に必要とされるアジャイルな組織マネジメントとは?

DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略語で、日本全体で推進されており、産業界全体の一大テーマとなっています。

デジタル技術を用いての根本的なビジネスモデルの変換を意味しますが、DXはデジタル機器を導入するだけではうまくいきません。重要なことの一つに組織マネジメントがあります。

デジタルに精通していながら、事業変革を率先して行える人材が集まった組織である必要があります。

そこでこの記事ではDX推進に必要な組織マネジメントについてご紹介し、組織マネジメントの要素の連携を捉える「組織の7S」について説明します。

また、DX推進に最適な「アジャイル組織」も紹介し、今後の組織マネジメントの課題について見ていきます。

組織マネジメントとは?

組織を運営するためには、「ヒト」「モノ」「金」「情報」の4つの経営資源を管理することが必要で、これらの効果を最大化するための手法が「組織マネジメント」です。

適切に配分や組織化を行い、有効に機能させることが組織マネジメントの本質です。

つまり、「経営資源を適切に管理して、組織の目標達成へと導くこと」が目的です。

その中でも特に「ヒト」の働きは必要不可欠です。しかしながら、ヒトは感情、体調、生活環境など様々な要因に影響されやすいために最も管理が難しい経営資源であると言えます。

円滑な組織マネジメント推進のためには、その他のヒト以外の3つの要素も重要ですが、特にヒトは力を入れて管理すべき経営資源であるでしょう。

組織マネジメントが重要視されるようになった背景には、年々「競争が激しくなっている」ことが挙げられます。

従来から人材を適材適所に配属する組織マネジメントの仕組みは行われていましたが、グローバル化やイノベーションの進展に伴い、より競争が激しくなり、より効率的な組織の運営が求められるようになりました。

その中で、組織を支える一人ひとりが組織の抱える課題を自分のこととしてとらえ、課題を解決するための取り組みを全体で共有して、自らの行動を変えていけるような組織マネジメントが必要とされているのです。

組織の7S

マッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した「組織の7S」というものがあります。これは組織の全体像と要素間の連携を捉えるための有用なフレームワークです。

組織の要素を7つのSで表して、それぞれの要素の関係がどのようになっているかを明らかにできます。

7つの要素のSは大きく2つに分類でき、「ハードのS」と「ソフトのS」とそれぞれ呼ばれています。ハードのSは比較的変更が簡単であるのに対して、ソフトのSは変更に時間がかかり難しいとされています。

「組織の構造に関するハードのS」

  • 戦略(Strategy) : 競争優位性を維持するための事業の方向性
  • 組織(Structure) : 組織の形態や構造
  • システム(System): 人事評価、報酬、情報、会計制度などの組織の仕組み

「人に関するソフトのS」

  • スキル(Skill): 営業力、マーケティング力、技術力などの組織に備わっている能力
  • 人材(Staff): 従業員や経営者など個々人の能力
  • スタイル(Style): 社風、組織の文化
  • 価値観(Shared Value): 従業員の中で共通認識を持つ企業の価値観

この組織の7Sを活用して、自社の組織課題を洗い出します。

組織の7Sの経営資源の中でも特に「ソフトのS」の改革は、「ヒト」に関わる内容であることから、教育・意識改革・企業文化など長期で取り組まなければならないことが多いです。

DX推進に必要とされる組織マネジメントは?

では次に、DX推進が叫ばれている今の時代に必要とされる組織マネジメントについて考えていきましょう。

現在の産業界は変化が激しく、製品サイクルや開発スピードがこれまでの経験ではあり得なかったことが起こっています。

新しいサービスが次々に誕生しては消えていき、生き残ったものだけが浸透していく状況となっています。破壊的テクノロジーの出現によって、業界の競争のルールが一気に入れ替わることも起こっています。

不確実な経営環境の中で、劇的な変化に対応できるような組織マネジメントが必要です。

このような環境下においては、変化に適応できない企業は生き残りが難しくなり、組織の柔軟性や変化への適応力が求められています。

そこで今話題になっているのが「アジャイル組織」と呼ばれる劇的な変化にも柔軟な対応がしやすくなるマネジメント手法です。

アジャイル組織とは?

アジャイル組織はソフトウェア開発で取り入れられているアジャイル開発の考え方を、開発組織に留まらず組織全体に適応する手法のことです。

アジャイル開発は、小さな単位で設計・実装・テスト・リリースを繰り返し行う開発手法のことを指します。「アジャイル」には素早い、機敏なという意味があり、小さくても良いので素早く顧客へ価値を届けて、そこからニーズを学習することを重視します。

他社と競争領域を担うシステム開発部門において、ユーザー企業内部に仮説・検証のサイクルを素早く回せるアジャイル開発体制を構築して、市場の変化を敏感に捉えながら小規模な開発を繰り返していく組織体制です。

アジャイル組織は、組織はフラットであり、トップだけでなくチームや社員にも権限を分散させます。

これにより意思決定までの時間を短縮でき、サイクルを素早く回すことが可能です。

組織マネジメントに必要な対策や待ち受けている課題は?

DXに成功する企業の割合は2割にも届かないと言われ、達成のハードルは極めて高いことが分かります。

それではDX推進活動に応用した場合、組織マネジメントはどのような対策が必要でしょうか?

またどのような課題が待ち受けているのでしょうか?

先程洗い出した「組織の7S」を元にして、対策や課題を考えていきます。

  • 戦略

自社の戦略を正しく理解しているかを、現在の状況に照らし合わせて整理する必要があります。

  • 組織

組織の経営スタイルや、経営者のコミットメント・理解度があるかを見ることが必要です。

DXには経営層のコミットメントが不可欠です。上に立つ人が率先して推し進めなくてはうまくいきません。中央集権型の組織からアジャイル型へ変化に強い組織へ移行するトップの意思決定が必要です。

  • システム

組織の仕組みや制度が整っているかどうかを考えます。アジャイル型では特に一人ひとりが自律的に動けることを重視するので、人事システムなどにおいて、人が自律的に動けるよう立て直しをする必要があるかもしれません。

  • スキル

スキルには事業開発や事業推進能力が必要で、DXの必要性は認識しているものの、一歩踏み込んだ具体的な案が検討されていないのが現状です。

  • 人材

最も重要であり欠かすことができない資源です。しかしながら人材はどこも不足しているのが現状です。

社内でのITスキルを持つ人材が育成できていないことが大きな課題です。

これまではシステムベンダーに丸投げしてしまうことが多く、内製化に舵をきろうとしても人材がいない事態に直面します。

  • スタイル

社風や職場環境などのスタイルが風通しのいい社風であれば従業員のパフォーマンスがあがります。

  • 価値観

固定した企業文化がないかどうかを考えましょう。

無自覚に組織に染み付いてしまっている当たり前のことを否定することも大切なときがあります。

例えば、時間をかけて愚直にやることを良いとする文化があったりしては効率的ではありません。

アジャイル組織では、会社のメンバーが目的を明確にして、熱意を持って取り組めるようなビジョンが策定されることが求められます。

まとめ

この記事ではDX推進に必要な組織マネジメントについてご紹介しました。

DXはデジタル技術を導入しただけではうまくいきませんし、技術や人材に豊富にお金をかければいいというわけでもありません。

社内の組織を変革し、ITに強い人材を社内で育て、変化に強い柔軟なアジャイルな組織が望ましいと言えるでしょう。

既存システムをどう変革しながらいかしていくかも含めて、組織形態も検討が必要です。

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