最近、コードを書かずに開発ができる「NoCode(ノーコード)」への関心が世界的に高まってきています。NoCodeで作られたサービスで事業売却の事例や、企業のNoCodeへの参画も目立つようになりました。現在開発はエンジニアのみができることではなく、非エンジニアもできる時代なのです。今後、NoCodeを使ってますますDX(デジタルトランスフォーメーション)も進むようになると予測されます。そこでこの記事では、NoCodeを使ったDX化の事例を紹介します。
現場でNoCodeを使ったDX化が求められる理由
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、業務の現場にITを浸透させることです。ただ、ITを浸透させるとはいっても、役に立たないシステムを作成しても仕方がありません。エンジニアはアプリは作ることはできますが、本当に役に立つアプリを作れるかどうかはわかりません。
もし、業務を知り尽くしている現場で働く人間がアプリを作れれば、IT化はスムーズに進むことは必然です。現場側は、今すぐに改善したい業務がどれか分かっています。今まではエンジニアに依頼をしないとアプリが作れませんでした。エンジニアに依頼をするということはその分工数もかかりますし、予算もかかります。これが現場ではIT化が遅れていると言われる一因かもしれません。そこで出てきたのがNoCodeです。現在はNoCodeのおかげでエンジニアに依頼することなく、現場の人間がすぐにそれをITによって改善できる仕組みを作ることができる時代なのです。
NoCodeならば、専門知識も不要で低コストで開発でき、短期間でアプリが作れるので、すぐに業務を改善することができます。このような理由で、NoCodeが今注目されているというわけです。
京セラでの実例
実際にどのように導入されたのか実例を出します。
京セラ「現場自ら、1日もかからずに棚卸しアプリを作り運用開始、在庫管理のスマート化を実現
京セラ株式会社の物流倉庫では、紙のリストを使って毎日在庫の棚卸を行っていましたが、ある日「棚卸用のアプリを作れないか」という意見を受け、NoCodeツール「Platio」で棚卸アプリを1日かからずに作成、運用を開始したところ、アプリ上で在庫数を共有できるため、用紙の受け渡しの手間と移動の時間を削減できたそうです。
また、効率化だけでなく、在庫照合を自動化したことで目視チェックによるミスがなくなり、在庫精度の向上を実現をも実現しました。
このように、NoCodeツールを使えば現場で働く人が業務上の不便を直接改善することができます。
NoCodeツールの問題点
NoCodeツールの利便性は上述したとおりですが、もちろん問題点もあります。
- 多くのNoCodeツールは海外製のため、日本語のリソースが少ない
- 運用コストが多少かかる
- データベースが弱い(多くのデータを保持できない)
- そのNoCodeツールに依存することになる
多くのNoCodeツールは海外製です。そのため、多少英語での文章を読む必要があります。その点は英語が読めない人にとっては少しとっかかりにくい点かもしれません。
運用コストに関しては、多くのツールでは月額制となっていることが多いです。とはいえ、月額10ドル以下のものがほとんどなので、エンジニアに外注することを考えると安いですね。また、独自ドメインを使わない場合は無料で使えることも多いので、社内でのみ使う場合は最初は無料の枠組みの中で始めても良いでしょう。
NoCodeツールでは内部にレイアウトからデータベースまでひとつのアプリ内で完結します。どのため、どうしてもデータベース部分が弱くなりがちです。例えば、NoCodeツールでLINEのようなチャットアプリを作ることは難しくありませんが、実際にユーザー数が現在のLINEと同等ぐらい増えるとアプリの存続は難しくなるでしょう。ただ、こちらも数百人〜数千人規模なら問題ないことがほとんどなので、ユーザー数が限られている社内システムなどで考えると大した問題ではないです。
最後に、一番問題になってくるのが、作ったNoCodeツールに依存してしまうということです。これはそのNoCodeツールがサービスを終了したら、必然的に作ったサービスも終了せざるを得なくなることを意味します。bubbleなどのいくつかのNoCodeツールでは、そのときに備えてソースコードをエクスポートできるようにしていますが、すべてのツールでそうとは限りません。そのため、NoCodeツールで作ったものを長年に渡って使うのは厳しい可能性があります。ただ、それでも現時点ですぐに仮に短期間であったとしても問題を解決できるのは魅力的です。
以上の様々な問題点はあるものの、現場で使うと考えた場合ではどれも大した問題ではないことがわかります。
まとめ
DX化が進む中で、エンジニアの需要がますます高まるようになりました。その一方で、エンジニア不足も深刻な問題となっています。もしエンジニアに頼ることなくアプリを作れたら…そのような願いを叶えるのがNoCodeツールです。
まだ多くのNoCodeツールは発展途上のため、上述したように多くの問題を抱えていますが、一部の業務を改善するのには十分な機能を備えています。
学習コストも少ないため、もしご自身の業務で不便な部分があるのなら、ぜひそれを改善するためのアプリを作ってみてはいかがでしょうか。