売掛金の督促順をAIが決める「AI債権回収」の活用シーン

この記事の要点

  • AIが、売掛金の取引先ごとに「いま、どこから手を打つべきか」の回収優先度を判断します。
  • 期日順に一律で督促する回収から、急ぐべき取引先から順に連絡する回収に変わります。
  • 会計システムから出した売掛金と入金履歴のCSVで始め、3〜8週のPoCで回収までの日数などを測ります。

AI債権回収は、売掛金の回収で「どの取引先から先に手を打つか」をAIが判断し、督促の順番を提案するしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、経理部長や債権管理の担当者、財務責任者の判断を支えます。この記事では、回収の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。

期日順の督促で起きていること

売掛金の回収は、多くの会社で期日を軸に進みます。支払期日を過ぎた請求書を一覧にし、古いものから順に電話やメールで連絡する、という流れです。ルールが単純で、担当者が変わっても同じ手順で進められる良さがあります。

ただ、期日順には弱点もあります。期日を数日過ぎただけの取引先でも、毎月きちんと入金してくれる相手なら、放っておいても払われることが多いものです。逆に、期日を過ぎてまだ日が浅くても、最近になって支払いが遅れがちになった相手や、金額の大きい相手には、早めに声をかけたほうが安全です。

現場では、こうした違いを担当者が頭の中で補っています。「この会社は月末に払う癖がある」「あの取引先は担当者が替わってから遅れている」といった記憶です。しかし、取引先の数が増えると、全部を覚えておくことはできません。ベテランの経験に頼ると、担当者が替わったときに回収の勘どころも一緒に失われます。

督促の連絡には時間がかかり、関係にも気を使います。限られた人手で全件に同じ手間をかければ、本当に急ぐ相手への対応が後回しになりかねません。回収の優先順位をどう付けるかが、経理の大きな課題です。

期日順に一律で督促する回収と、急ぐ取引先から順に手を打つ回収を比べた図
図1:期日順の回収から、優先度順の回収へ

AI債権回収が判断すること

AIが判断するのは「回収優先度」です。判断のパターンでいえば「優先順位づけ:何を優先するか」にあたり、たくさんの売掛金の中から、いま手を打つべきものを順番に並べる判断です。

AIは、請求の金額、支払期日、これまでの入金の傾向、支払いが遅れた回数などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成するのではなく、決めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこの売掛金は、期日までに入金されない可能性が高いか
どれを選ぶかこの取引先には、メール・電話・訪問のどの連絡方法が合うか
どの程度か各取引先の回収の急ぎ度(優先度)

答えが型で返ってくるため、そのまま督促リストの並び順や担当者への割り振りにつなげられます。人が全件を見比べて順番を考えるのではなく、AIが並べた順番を人が確かめて決める流れに変わります。

導入後の経理の1日

たとえば、取引先が数多くある卸売業の経理部門で、売掛金の一部の取引先から使い始めた場合を考えてみます。

朝、債権管理の担当者は画面で今日の督促リストを開きます。リストは回収の急ぎ度が高い順に並んでいて、各行には「入金が遅れる可能性が高い」「前回より支払いが遅くなっている」といった理由と、確信度が付いています。担当者は上から順に目を通し、連絡する取引先を決めます。

日中、担当者は優先度の高い取引先から連絡します。AIが提案した連絡方法を参考にしながら、実際の言葉づかいや交渉は担当者が決めます。優先度が低く、いつも期日どおりに入金される相手には、定型の案内メールだけを送ります。手間をかける相手を絞れるので、一件ごとの連絡に時間をかけられます。

夕方、経理部長はその日の入金状況を確かめます。連絡した結果や入金の有無を画面に記録しておくと、翌日の優先度の判断に反映されます。回収の順番づけが、担当者の記憶から、毎日更新される共通の材料に変わります。

導入後の経理の1日を、朝・日中・夕方の流れで示した図
図2:導入後の経理の1日

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの答えには確信度が付きます。この確信度で、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを決めます。

  • 確信度95%以上:いつも期日どおりに入金される相手への定型の案内など、影響が小さく、条件を確実に満たす案件です。自動で案内の対象に入れます。
  • 確信度70〜95%:支払いの遅れが目立ちはじめた相手など、連絡の仕方で関係に影響しうるものです。債権管理の担当者が確認してから連絡します。
  • 確信度70%未満:取引が始まったばかりで入金の履歴が少ない相手や、金額が大きく交渉が必要なものです。経理部長や専門の担当者が判断します。

この閾値は最初から決め打ちにせず、PoC(本格導入の前に効果を確かめる試行)で確かめて決めます。はじめはすべての案件を人が確認し、AIの順番と担当者の判断がどれくらい一致するかを見てから、任せる範囲を広げていくのが安全です。回収は取引先との関係に直結するため、最終的な連絡の判断は、人の承認を前提に設計します。

確信度の3段階と、AIに任せる範囲・人が確認する範囲を示した図
図3:確信度の3段階で、任せる範囲を決める

小さく始める手順

いま使っている会計システムや販売管理システムは入れ替えません。AIはその上にのる「判断レイヤー」として入り、まずは手元のCSVから始められます。

  1. 会計システムから、売掛金の一覧と過去の入金履歴をCSVで書き出します。対象は、特定の事業部や一部の取引先などに絞ります。
  2. AIが並べた優先順位と、担当者がふだん付けている順番を、机上で比べます。この段階では、実際の連絡は変えません。
  3. 合意できた範囲から実際の督促に使い、指標の変化を確かめます。

PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。

  • 入金までの日数
  • 期日を過ぎた売掛金の残高
  • 督促にかかった時間
  • 督促の連絡件数
  • AIの順番と担当者の判断が一致した割合

目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから一緒に決めます。効果が確かめられた範囲を広げ、ほかの取引先や業務へ育てていく進め方です。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩になります。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。

PoCで測る5つの指標を一覧にした図
図4:PoCで測る5つの指標

会計・財務の判断を支えるほかのAI

会計・財務の現場には、回収のほかにも、毎月くり返される判断があります。たとえば、予算と実績のずれを見つけて原因の確認を促す「AI予実管理」などです。どの判断から始めるかは、担当者が迷う時間が長い業務から選ぶのが近道です。

よくある質問

いま使っている会計システムは入れ替える必要がありますか

入れ替える必要はありません。AIは既存のシステムの上にのる判断レイヤーとして入り、まずは会計システムから書き出したCSVで始められます。

どのようなデータが必要ですか

売掛金の一覧(金額・支払期日)と、過去の入金の履歴が基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で足りないデータを確かめます。

どのくらいの期間で試せますか

PoCは3〜8週が目安です。週ごとに結果を見ながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。

トップ画像の写真:Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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