好みまで汲んだ物件をAIが並べる「物件提案AI」の活用シーン

この記事の要点

  • AIが、顧客ごとに、どの物件を推奨するかを確率と確信度つきで判断します。
  • 条件検索の結果をそのまま送る提案から、好みまで汲んだ候補が並ぶ提案に変わります。
  • 手元のCSVから始め、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で提案後の反応などを測ります。

物件提案AIは、顧客の希望条件と物件の情報を組み合わせ、どの物件を推奨するかをAIが判断し、好みまで汲んだ候補を並べるしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、不動産会社の営業責任者や仲介の担当者、DX推進担当者の判断を支えます。本記事では、提案の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。

条件検索の結果を送る物件提案で起きていること

不動産の仲介では、顧客から希望の条件を聞き、物件情報のシステムで検索して、結果を顧客へ送る提案が広く行われています。賃料、間取り、駅からの距離といった条件で絞り込むため、手順は分かりやすく、提案までの時間も短くできます。

一方で、条件に合う物件は、一つとは限りません。検索結果が多いと、顧客は一覧を見比べるだけで疲れてしまい、どれが自分に合うのかを選びきれなくなります。結局、問い合わせや内見の希望が出ないまま、検討が止まることもあります。

顧客の好みは、条件の欄に書ききれません。日当たりを重視するのか、周辺の雰囲気を重視するのか、といった違いは、会話の中で少しずつ見えてきます。この違いを汲み取って候補を並べ替えるのは、営業担当者の経験に頼る部分です。

その結果、同じ会社でも、担当者によって提案の質にばらつきが出ます。経験の浅い担当者は、条件検索の結果をそのまま送るほかに手がありません。ベテランの担当者も、多くの顧客を同時に受け持つと、一人ひとりに合わせて物件を選び直す時間を確保できません。

これまでの条件検索の結果を送る提案と、物件提案AIのあとの好みまで汲んだ候補を並べる提案の比較
図1:条件検索の結果を送る提案から、好みまで汲んだ候補を並べる提案へ

物件提案AIが判断すること

物件提案AIが判断するのは、推奨物件です。判断のパターンは「組み合わせ:何と何を組み合わせるか」にあたり、顧客の希望と物件の特徴を組み合わせて、相性のよい順に候補を並べます。文章を生成するのではなく、業務の「判断」だけを確率と確信度つきで返す点が、Decision AI の特徴です。

答えの型は、はい/いいえ、どれを選ぶか、どの程度か、の3つです。この業務では、次のような問いが自然です。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこの物件は、この顧客に提案すべきか
どれを選ぶかこの顧客に、どの物件を最初に見せるか
どの程度かこの顧客にとって、その物件はどの程度合っているか

既存の物件情報システムや顧客管理システム(CRM、顧客関係システム)は入れ替えません。その上にのる「判断レイヤー」として、推奨物件の並びだけを返します。最終的に顧客へ何を送るかは、営業担当者が決定します。

こうした状況では、提案のたびに「この顧客には、どの物件が合うのか」という判断が生じます。この判断は、検索の条件だけでは決まらず、顧客の好みと物件の特徴をどう組み合わせるかに左右されます。物件提案AIは、この組み合わせの判断を、担当者に代わって下ごしらえする位置づけです。

導入後の営業担当者の1日

たとえば、賃貸の仲介を行う店舗を考えてみます。ここでは、物件提案AIが入った日の流れを、時間の順に描きます。

導入後の営業担当者の1日を、朝、日中、夕方の流れで示した図
図2:導入後の営業担当者の1日

朝、営業担当者は、前日に問い合わせのあった顧客の一覧を開きます。それぞれの顧客について、AIが並べた推奨物件の候補が付いています。担当者は、上位の候補とその根拠を確認し、顧客の話し方から感じ取った好みと食い違いがないかを見ます。

日中は、来店した顧客との会話の中で、新しく分かった好みを入力します。AIは、その情報を踏まえて候補の並びを組み直します。担当者は、組み直された候補から、その場で見せる物件を選べます。

夕方には、確信度が低く、AIが判断に迷った顧客の案件が、上長への確認として並びます。上長は、顧客の事情を踏まえて、見せる物件の方針を示します。担当者は、翌日の提案に向けて、顧客の反応を記録します。

AIに任せる範囲を確信度で決める

Decision AI は、判断に確信度をつけて返します。確信度に応じて、任せる範囲を3段階に分けます。95%以上は自動で処理し、70〜95%は営業担当者が確認し、70%未満は上長や専門家が判断します。閾(しきい)値は、PoCで確認して定めます。

確信度が95%以上は自動で処理、70〜95%は担当者が確認、70%未満は上長や専門家へ回す3段階の図
図3:確信度による任せる範囲の3段階。閾値はPoCで確認して定めます

物件の提案では、たとえば、確信度が高い候補を、顧客への最初の提案文に添える候補として自動で並べる運用が考えられます。中間の候補は、営業担当者が顧客の様子と照らして確認します。確信度が低い候補は、上長や専門家が方針を示します。

任せる範囲は、最初から広げません。企業は、PoCの期間に、AIの推奨と営業担当者の判断を並べて比較し、一致する場面と食い違う場面を確認します。食い違いの理由を見ることで、どの種類の顧客や物件でAIに任せられるかが分かり、閾値を現場に合わせて定められます。

顧客の住まいに関わる判断であり、最終的な提案は、人の承認を前提に設計します。AIは、人が判断するための候補と根拠を整える役割を担います。

物件提案AIを小さく始める手順

始めるときは、企業が、希望条件の履歴と物件の一覧を、手元のCSVで用意します。既存のシステムはそのまま使えるため、大きな改修は必要ありません。業界特化の AI SaaS として、1業務から小さく始め、効果を確認しながら育てます。

データの用意、PoCでの試行、指標の測定、範囲の拡大という4つの手順を並べた図
図4:CSVから始めて、PoCを経て範囲を広げる4つの手順

PoCの期間は、3〜8週が目安です。この間に、AIの推奨と、営業担当者の判断を比較します。測る指標は、次のようなものです。

  • 提案した物件に対する、顧客の問い合わせや反応の割合
  • 内見の希望につながった提案の割合
  • AIの推奨と、営業担当者の判断が一致した割合
  • 顧客一人あたりの提案にかかる準備時間
  • 担当者ごとの提案の質のばらつき

数値の目標は、貴社のデータを使ったPoCで定めます。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。

似た判断を担うAI

同じ不動産の業界では、賃料の査定のように、物件の条件から金額の水準を判断するAIも想定できます。提案と査定を同じ判断レイヤーの上に並べることで、営業担当者は、提案から条件の交渉までを一つの流れで進められます。

よくある質問

既存の物件情報システムはそのまま使えますか

使えます。物件提案AIは、既存のシステムを入れ替えず、その上にのる判断レイヤーとして入ります。

データはどれくらい必要ですか

手元のCSVから始められます。必要なデータの量は、PoCの中で確認します。

どのくらいの期間で試せますか

PoCの期間は、3〜8週が目安です。最終判断が必要な業務は、人の承認を前提に設計します。

トップ画像の写真:Photo by sophie peng on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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