今日動くべき案件をAIが並べる「営業優先度AI」の活用シーン

この記事の要点

  • AIが、抱えている案件のうち、今日どれから動くべきかという対応順位を判断します。
  • 週次会議で順番を決める営業から、今日動くべき案件から手をつける営業に変わります。
  • CRMから書き出した案件のCSVで始め、3〜8週のPoCで商談化率や対応の遅れなどを測ります。

営業優先度AIは、営業担当者が抱える案件のうち、どれから対応すべきかをAIが判断し、対応順位として毎日示すしくみです。営業の責任者やマネージャー、営業企画の担当者が、案件の見落としを減らし、動くべきタイミングをそろえるのに役立ちます。この記事では、営業の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。

週次会議で案件の順番を決める営業の困りごと

多くの営業組織では、案件の優先順位は週次の会議で話し合って決めます。担当者が案件を報告し、マネージャーが「次はこの案件を詰めよう」と方向を示す流れです。

この方法には、よさもあります。経験のあるマネージャーの目で、案件の勘所を確かめられるからです。一方で、会議で決めた順番は、会議の翌日からすぐに古くなっていきます。お客様から返事が届く、競合の動きが見える、担当者が変わるなど、案件の状況は日々動いているからです。

その結果、次のような困りごとが起こります。声の大きい案件や、直近で話題になった案件に時間が偏ります。静かにしている案件が、気づかないうちに止まってしまいます。担当者によって、優先順位の付け方が違います。

CRM(顧客管理システム)には、案件の進み具合や接点の履歴がたまっています。ただ、それを毎日一件ずつ見比べて順番を考える時間は、現場にはありません。「今日、どの案件から連絡するか」は、担当者の勘に任されがちです。

週次会議で順番を決める営業と、毎日の対応順位から動く営業を左右に並べた比較図
図1:案件の順番を決めるタイミングが、週に一度の会議から、毎日の対応順位に変わります。

営業優先度AIが判断すること

AIが判断するのは「案件の対応順位」です。判断のパターンでいえば「優先順位づけ(何を優先するか)」にあたります。数ある案件の中から、いま手をつけるべき順番を決める判断です。

AIは、CRMにある案件の進み具合、接点の履歴、最後に連絡してからの経過などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成するのではなく、決めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこの案件は、今日対応すべきか
どれを選ぶか複数の案件のうち、最初に手をつけるのはどれか
どの程度か各案件の優先度と、動くべき緊急度

答えが型で返ってくるため、そのまま朝の案件リストの並び順として使えます。人が全案件を見比べて順番を考えるのではなく、AIが並べた順番を人が確かめて動く流れに変わります。

導入後の営業担当者の1日

たとえば、法人向けのサービスを売る営業チームで、担当者が二十件ほどの案件を同時に抱えている場合を考えてみます。

朝、営業担当者はCRMを開き、今日の対応順位を確かめます。上位の案件には、「返事を待つ期間が長くなっている」「提案の期限が近い」といった理由が添えられています。担当者は上から順に、連絡する案件を決めます。

日中、担当者は上位の案件から連絡や提案の準備を進めます。商談の結果や、お客様からの返事はCRMに記録します。状況が変わった案件は、記録をもとに順位が見直されます。急ぎの返事が届いた案件が、リストの上に上がってくる形です。

夕方、マネージャーはチーム全体の案件の動きを確かめます。順位の高かった案件に手が回っているか、順位が低いまま止まっている案件はないかを見ます。週次会議は、順番を決める場から、AIの順位と現場の感覚が食い違った案件を話し合う場に変わります。

朝、日中、夕方の3つの時間帯で、営業担当者とマネージャーの仕事の流れを順に示した図
図2:朝から夕方までの流れ。AIの順位を見て、人が確かめて動きます。

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの答えには確信度が付きます。この確信度で、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを決めます。

  • 確信度95%以上:期限が近い、返事を待つ期間が長いなど、条件がはっきりしている案件です。朝のリストの上位に自動で並べます。
  • 確信度70〜95%:状況の読み方に幅がある案件です。営業担当者が内容を確かめてから、動くかどうかを決めます。
  • 確信度70%未満:履歴が少ない新しい案件や、大きな金額が動く案件です。マネージャーや営業の責任者が判断します。

この閾値は最初から決め打ちにせず、PoC(本格導入の前に効果を確かめる試行)で確かめて決めます。はじめは順位をすべて人が確認し、AIの順位と担当者の判断がどれくらい一致するかを見てから、任せる範囲を広げていくのが安全です。

確信度の0%から100%の目盛りを、70%未満、70から95%、95%以上の3段階に分け、それぞれの任せ方を示した図
図3:閾値はPoCで確かめて決めます。金額の大きい案件は人の判断を前提にします。

営業優先度AIを小さく始める手順

いま使っているCRMは入れ替えません。AIはCRMの上にのる「判断レイヤー」として入り、まずは手元のCSVから始められます。

  1. CRMから、案件の一覧と進み具合、接点の履歴をCSVで書き出します。対象は1つのチームや1つの商品に絞ります。
  2. AIの対応順位と、担当者やマネージャーの判断を机上で比べます。この段階では、実際の営業の動きは変えません。
  3. 合意できた順位から、朝のリストとして使い始め、指標の変化を確かめます。

PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。

  • 商談化率
  • 案件ごとの対応までの日数
  • 対応が止まっている案件の数
  • AIの順位と担当者の判断の一致度
  • 週次会議にかかる時間

目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから一緒に決めます。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩になります。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。

データの用意、机上で比べる、朝のリストに使う、指標を測るの4つの手順を矢印でつないだ図
図4:既存のCRMはそのままに、1つずつ確かめて進めます。

営業・CRMの判断を支えるほかのAI

営業の現場には、案件の順番のほかにも、毎日くり返される判断があります。たとえば、案件ごとに誰が担当するかを決める「担当者AI」などです。どの判断から始めるかは、現場で迷う時間が長い業務から選ぶのが近道です。

よくある質問

いま使っているCRMは入れ替える必要がありますか

入れ替える必要はありません。AIはCRMの上にのる判断レイヤーとして入り、まずはCRMから書き出したCSVで始められます。

どのようなデータが必要ですか

案件の一覧、進み具合、接点の履歴が基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で足りないデータを確かめます。

どのくらいの期間で試せますか

PoCは3〜8週が目安です。週ごとに結果を見ながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。

トップ画像の写真:Photo by Mimi Thian on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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