この記事の要点
- AIが、荷物ごとの適正な運賃帯(下限から上限までの幅)を、確信度つきで判断します。
- 担当者が過去の見積りを探して値を決める査定から、適正な幅を見て判断する査定に変わります。
- 手元の見積りと実績のCSV(表計算ソフトで扱える一覧データ)から始め、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で指標を測ります。
運賃査定AIは、荷物の条件に応じた適正な運賃の幅をAIが判断し、見積り担当者が値を決める作業を支えるしくみです。クラスフォックスが設計した、判断に特化したAI(Decision AI)の一つで、物流・倉庫の営業担当や見積り担当、運賃を管理する責任者の判断を対象にしています。本記事では、運賃査定の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、AIに任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。
運賃査定の現場で起きていること:過去の見積りを探す作業
物流の見積り依頼が届くと、担当者は発地・着地・荷物の大きさ・重さ・希望する日時を確認します。続いて、似た条件の過去の見積りを探し、その金額を手がかりに運賃を決めることが少なくありません。
この方法では、探す時間がかかるうえに、どの見積りを参考にするかが担当者の経験に左右されます。同じ条件の依頼でも、担当者が違えば金額が変わる場合があります。
さらに、燃料や人手の状況、季節による荷量の波、帰り便の空き具合といった事情は、過去の見積りの金額だけでは読み取れません。企業は、採算を割る運賃で受注するリスクと、高すぎて失注するリスクの両方を抱えたまま、査定を続けることになります。
査定の基準が担当者ごとに異なると、営業担当は荷主に対して、なぜその金額になったのかを説明しにくくなります。担当者が不在のときには、査定が止まる場合もあります。運賃の査定を属人的な作業にしないことが、現場の課題です。

運賃査定AIが判断すること
運賃査定AIが判断するのは、「適正運賃帯」です。判断のパターンは「優先順位づけ」で、問いは「何を優先するか」です。この業務では、受注の可否や価格の水準を決める際に、どの条件を重く見るかを整理する役割を担います。
Decision AIは、文章を生成するAIではありません。業務の判断だけを、確率と確信度をつけて返します。答えの型は3つあり、運賃査定では次のような問いになります。
| 答えの型 | この業務での問い |
|---|---|
| はい/いいえ | この見積りは、採算を確保できる運賃の幅に収まっているか |
| どれを選ぶか | 参考にする過去の見積りと実績のうち、どれを優先して見るか |
| どの程度か | この荷物の適正な運賃帯は、どの水準から、どの水準までか |
既存のシステムは入れ替えません。運賃査定AIは、見積りの管理に使っているシステムの上にのる判断レイヤー(判断を担う層)として動きます。
導入後の1日:見積り担当者の朝から夕方まで
たとえば、複数の荷主から見積り依頼が寄せられる物流会社の営業所を考えてみます。ここでは、AIの判断を見ながら査定する1日を描きます。
朝、見積り担当者は、前日の夕方から届いた依頼の一覧を開きます。各依頼には、AIが判断した適正運賃帯と確信度が並んでいます。担当者は、確信度が高い依頼から順に、金額の案を確認します。
日中、条件が複雑な依頼が届きます。担当者は、AIが示した運賃帯の幅と、参考にした過去の見積りを見比べます。幅が広い依頼では、荷物の特性や帰り便の事情を加味して、幅のどこに置くかを自分で定めます。
夕方、運賃を管理する責任者は、その日に出した見積りの金額が適正な幅に収まっていたかを確認します。幅から外れた見積りがあれば、理由を記録します。この記録は、翌日以降の判断を見直す材料になります。
このように、AIは金額を一方的に決定しません。担当者は、運賃帯という根拠を持って判断できるため、荷主から金額の理由を問われた場合にも、説明しやすくなります。経験の浅い担当者にとっても、判断の目安が明確になります。

AIに任せる範囲をどう決めるか:確信度の3段階
Decision AIでは、確信度に応じて、任せる範囲を段階で分けます。しきい値(段階を分ける境目)は、PoCで検証して定めます。
- 確信度95%以上:AIの判断をもとに、見積りを自動で作成します。条件が定型で、過去に近い依頼が多い荷物が対象になります。
- 確信度70〜95%:担当者が、AIの運賃帯を確認してから金額を決定します。
- 確信度70%未満:責任者や運賃の専門家が判断します。初めて取り扱う条件や、特殊な荷物がここに入ります。
運賃は、受注するかどうかを左右する判断です。したがって、最終的な価格の決定には、人の承認を前提に設計します。自動で処理する範囲も、まずは小さく設定し、実績を見ながら広げていきます。
たとえば、定期的に同じ条件で依頼される荷物は、確信度が高くなりやすい対象です。一方、季節の荷量の波が大きい時期や、取扱いの少ない地域への輸送は、確信度が下がりやすく、人の判断が中心になります。企業は、この段階ごとの傾向を見ながら、自動で処理する範囲を段階的に定めます。

運賃査定AIを小さく始める手順
始めるときは、システムの入れ替えは必要ありません。過去の見積りと受注・失注の実績を、CSVにして用意します。1つの荷主、あるいは1つの路線の見積りから始めることもできます。
PoCの期間は、3〜8週が目安です。この間に、AIが示す運賃帯と、担当者が実際に決めた金額を並べて比較します。AIの判断が実務に使えるかを確認したうえで、任せる範囲を定めます。
PoCで測る指標は、次のとおりです。数値の目標は、PoCの前には定めません。
- 運賃帯と、担当者が決めた金額との一致の度合い
- 1件の見積りに要する査定の時間
- 担当者ごとの金額のばらつき
- 採算を割る見積りの件数
- 確信度の段階ごとの、担当者による修正の割合

業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。運賃査定は、判断の基準が見積りの履歴として残っているため、その一歩を踏み出しやすい業務の一つです。
なお、業界特化のAIサービスは、1業務から小さく始めて育てる形で提供されます。初期費用は0円で、月額10万円(税別)からです。
よくある質問
既存の見積りのシステムはそのまま使えますか
使えます。既存のシステムは入れ替えず、その上にのる判断レイヤーとして運賃査定AIを加えます。
データはどれくらい必要ですか
手元の見積りと実績のCSVから始められます。必要な量は荷物の種類や路線によって異なるため、PoCの中で確認して定めます。
どのくらいの期間で試せますか
PoCの期間は、3〜8週が目安です。最終的な価格の決定には、人の承認を前提に設計します。
トップ画像の写真:Photo by Sander Yigin on Unsplash
本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。
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