工程の遅れを先読みする「工程遅延AI」の建設現場での活用シーン

この記事の要点

  • AIが、工程ごとに「遅れる可能性」を確率と確信度つきで判断し、遅れそうな工程を先に知らせます。
  • 週次の定例会議で遅れが分かる現場から、遅れそうな工程に先に人と段取りを回す現場に変わります。
  • 工程表や日報などの手元のCSVで始め、3〜8週のPoCで、遅れの見つかる早さなどの指標を測ります。

工程遅延AIは、建設現場の工程ごとに遅れる可能性をAIが判断し、現場監督や工事部長が先に人と段取りを回せるようにするしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、遅れに気づく時期を前倒しすることを狙います。この記事では、工程管理の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、AIに任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。

工程管理で遅れが後から分かる現場の困りごと

建設・施工の現場では、工程表をもとに、基礎、躯体、設備、内装といった作業が順番に、ときには並行して進みます。ある工程が遅れると、あとに続く工程の着手日がずれ、職人や資機材の手配にも影響が広がります。

ところが、遅れが見つかるのは、多くの場合、週次の定例会議です。現場監督が進み具合を報告し、「この工程は予定より遅れています」と分かった時点では、すでに数日が過ぎています。そこから職人の手配を組み直し、資材の納品日を変えようとしても、先方の都合で動かせないことがあります。

遅れの兆しは、実はもっと早くから現場に出ています。天候で作業が止まった日、資材の納品がずれた日、検査のやり直しが出た日、日報の人数が予定より少なかった日などです。ただ、一つひとつは小さな出来事で、複数の現場を見ている工事部長には、全体を見渡して「どの工程が危ないか」を拾い上げる時間がありません。

その結果、現場は遅れてから動く「後追い」になりがちです。遅れそうな工程を早い段階で見つけ、先に手を打つための材料が足りていないのです。

定例会議で遅れを知る現場と、遅れそうな工程を先に見つける現場の比較
図1:遅れを後から知る現場から、先に手を打つ現場へ

工程遅延AIが判断すること

AIが判断するのは「遅延可能性」、つまりその工程が予定どおりに終わらない可能性です。判断のパターンでいえば「リスク・異常の検知」にあたり、「危険か、異常か」という問いを、工程の遅れに当てはめたものです。

AIは、工程表の予定と実績、日報に書かれた人数や作業内容、天候、資材の納品状況、検査の結果などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成するのではなく、決めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこの工程は、遅れの可能性が決めた閾値を超えたか
どれを選ぶか遅れそうな工程のうち、先に手を打つのはどれか
どの程度かそれぞれの工程の遅れの可能性と、後続の工程への影響の大きさ

答えが型で返ってくるため、定例会議の資料や、職人手配の見直しにそのままつなげられます。人が全工程の進み具合を一から読み解くのではなく、AIが挙げた「危ない工程」から確かめ始める流れに変わります。

導入後の現場の1日:遅れそうな工程に先に手を打つ

たとえば、中規模の建物を複数同時に進めている工事部で、一つの現場から使い始めた場合を考えてみます。

朝、現場監督はその日の画面を開き、遅れの可能性が高い順に並んだ工程の一覧を確かめます。「来週着手の設備工事は、前の工程の遅れで着手が危うい」といった指摘に、確信度が付いています。監督は、現場を回る前に、気になる工程を頭に入れておきます。

日中、現場を見ながら、AIが挙げた工程の実際の状況を確かめます。資材の納品が遅れている、職人の人数が足りていない、といった原因が分かれば、その場で協力会社に連絡して段取りを組み直します。定例会議を待たずに、遅れが大きくなる前に動けます。

夕方、日報を入力すると、その日の実績がAIの判断に反映されます。工事部長は、複数の現場について、遅れの可能性が高い工程だけを一覧で見て、応援の人員や資材の手配を、どの現場に先に回すかを決めます。

翌週の定例会議では、すでに手を打った工程の報告が中心になります。会議が「遅れの発見の場」から、「対策を決める場」に変わります。

朝・日中・夕方・翌週の定例会議の順に、遅れそうな工程へ先に手を打つ流れ
図2:導入後の1日と、翌週の定例会議

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの答えには確信度が付きます。この確信度で、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを決めます。

  • 確信度95%以上:遅れの兆しがはっきりしていて、影響の範囲も限られる工程です。担当者への注意の通知を、自動で出します。
  • 確信度70〜95%:遅れの可能性は高いものの、原因や影響が複数に及ぶ工程です。現場監督が内容を確認してから、手配の見直しを決めます。
  • 確信度70%未満:過去に似た工程が少ない、天候や近隣との調整など外の要因が大きい工程です。工事部長や専門の担当者が判断します。

この閾値は最初から決め打ちにせず、PoC(本格導入の前に効果を確かめる試行)で確かめて決めます。はじめはAIの指摘をすべて人が確認し、現場の実感とどれくらい一致するかを見てから、任せる範囲を広げていくのが安全です。工程の変更が契約や安全に関わる場合は、人の承認を前提にします。

確信度が95%以上、70〜95%、70%未満の3段階で、AIと人の役割を分ける
図3:確信度で決める、AIに任せる範囲

小さく始める手順

いま使っている工程管理や施工管理のシステムは入れ替えません。AIはその上にのる「判断レイヤー」として入り、まずは手元のCSVから始められます。

  1. 工程表の予定と実績、日報、検査の記録などをCSVで書き出します。対象は、1つの現場や1つの工種に絞ります。
  2. 過去の工程について、AIの遅延可能性と、実際に遅れたかどうかを机上で比べます。この段階では、現場の運用は変えません。
  3. 合意できた範囲から、実際の現場で遅れそうな工程の通知を使い、指標の変化を確かめます。
CSVの書き出し、机上での比較、現場での試用という3つの手順
図4:手元のCSVから始める3つの手順

PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。

  • 遅れが見つかるまでの日数
  • 遅れそうな工程を言い当てた割合
  • 見逃した遅れの件数
  • 空振りの通知の件数
  • 定例会議で遅れの報告にかかる時間

目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから一緒に決めます。効果が確かめられた範囲を広げ、ほかの現場や工種へ育てていく進め方です。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩になります。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。

建設・施工の判断を支えるほかのAI

建設の現場には、工程のほかにも、毎日くり返される判断があります。たとえば、現場の危険の度合いを判断する「現場安全AI」や、職人を工程に合わせて選ぶ「職人配置AI」があります。資材を発注するかどうかを決める「資材発注AI」や、赤字のリスクを早めに知らせる「原価超過AI」もあります。どの判断から始めるかは、現場で迷う時間が長い業務から選ぶのが近道です。

よくある質問

いま使っている工程管理のシステムは入れ替える必要がありますか

入れ替える必要はありません。AIは既存のシステムの上にのる判断レイヤーとして入り、まずは書き出したCSVで始められます。

どのようなデータが必要ですか

工程表の予定と実績、日報、天候や資材の納品の記録などが基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で足りないデータを確かめます。

どのくらいの期間で試せますか

PoCは3〜8週が目安です。期間中に結果を見ながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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