危ない作業をAIが先に挙げる「現場安全AI」の建設・施工での活用シーン

この記事の要点

  • AI(人工知能)が、作業ごとの危険度を判断し、危ない作業を職長に先に知らせます。
  • 現場は、巡回の目だけで危険を探す進め方から、AIが挙げた作業を職長が確認する進め方へと変わります。
  • 企業は、手元の作業計画や点検記録のCSV(表形式のデータファイル)から始め、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で指標を測ります。

現場安全AIは、建設・施工の現場で、どの作業にどの程度の危険があるかをAIが判断し、危ない作業を先に挙げて職長の確認につなげる仕組みです。この仕組みは、クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS(SaaS:インターネット経由で利用するソフトウェア)の一つです。現場代理人や安全担当者、職長の判断を支えます。本記事では、安全管理の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、AIに任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に解説します。

建設現場の安全管理で起きていること

多くの建設現場では、安全担当者や職長が現場を巡回し、自分の目で危険を探しています。足場の状態、重機の動線、高所での作業、資材の置き方など、担当者が確認する点は多岐にわたります。

現場は日ごとに姿を変えます。昨日は安全だった通路が、今日は資材で狭くなることもあります。工程が進めば、同じ場所でも作業の内容と危険の種類が変わります。

巡回の頻度や視点は、担当者の経験に左右されます。ベテランの職長は危うい兆しに気づけますが、その見方は言葉にしにくく、若手に伝わりにくいという課題があります。また、巡回の時間にも限りがあるため、担当者がすべての作業を同じ深さで見ることはできません。

作業計画書や点検の記録、ヒヤリハット(事故には至らなかった危うい出来事)の報告は、現場に蓄積されています。しかし、これらを毎日の判断に結びつけて読み返す余裕は、現場にほとんどありません。危険を探す仕事が人の注意力に集中していることが、見落としの起きやすい構造につながっています。

巡回の目だけで危険を探す現場と、現場安全AIの導入後の、先回りで対応する現場を左右に並べた比較図
図1:危険を探す役割が、巡回の目だけから、AIが挙げた作業を職長が確認する流れに変わります。

現場安全AIが判断すること

AIが判断するのは「作業ごとの危険度」です。判断のパターンでいえば「リスク・異常の検知」にあたり、AIは危険か、異常かを見分けます。

AIは、作業計画、天候、工程の進み具合、過去の点検記録やヒヤリハットの報告などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成するのではなく、定めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、AIが次の3つの型で答えを返します。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこの作業に、今日、重点的な確認が必要か
どれを選ぶか危険の種類のうち、どれに当たるか。どの確認を優先するか
どの程度か各作業の危険度と、確認の優先度

答えが型で返ってくるため、職長は一から危険を探す必要がなくなります。職長がAIの挙げた作業から確認を始め、現場の状況と照らして最終的に判断する流れに変わります。

導入後の現場の1日

たとえば、中規模のビルを建てる現場で、足場を使う作業から使い始めた場合を考えます。

足場の上で天井の近くの作業をしている人が写っている建設現場の写真
高所や足場での作業のように、危険の見極めが必要な場面のイメージです。 Photo by Glenov Brankovic on Unsplash

朝、現場代理人は、当日の作業一覧を危険度の高い順に確認します。一覧には「高所での資材の受け渡し」「重機と人が近づく搬入の時間帯」など、重点的に確認すべき作業とその理由が表示されます。職長は朝礼で、その作業を重点項目として作業員に伝えます。

日中、職長は一覧の上位にある作業の現場を優先して巡回します。職長は、実際に見て問題がなければ確認済みとして記録します。想定外の状況があれば、その場で作業の手順を見直します。職長の判断は記録として残り、AIの次回の判断材料になります。

夕方、安全担当者は、その日の確認結果を振り返ります。AIが危険と判断した作業のうち、実際に対応が必要だったものと、そうでなかったものを確認します。安全担当者は、その結果をもとに、翌日以降の確認の重点を調整します。巡回の経験が、個人の記憶にとどまらず、現場の共通の知識として蓄積されていきます。

朝、日中、夕方の3つの時間帯で、現場の安全確認の流れを順に示した図
図2:朝から夕方までの流れ。AIが挙げた作業を、職長が確認したうえで動きます。

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの答えには確信度が付きます。企業は、この確信度によって、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを定めます。

  • 確信度95%以上:毎日の定型的な点検項目の通知など、影響が小さく判断が明確なものです。AIが自動で職長の確認一覧に加えます。
  • 確信度70〜95%:作業の手順の変更を伴う可能性があるものです。職長が現場を見て確認してから決定します。
  • 確信度70%未満:初めての工法や、記録の少ない作業、複数の作業が重なる場面です。現場代理人や安全の専門家が判断します。

人の安全に関わる判断は、最終的に人が承認する前提で設計します。この閾(しきい)値は最初から固定せず、PoCで検証して定めます。はじめは、すべての答えを職長が確認し、AIの判断と人の判断がどの程度一致するかを見たうえで、任せる範囲を広げていく進め方が安全です。

確信度の0%から100%の目盛りを、70%未満、70から95%、95%以上の3段階に分け、それぞれの任せ方を示した図
図3:閾値はPoCで検証して定めます。安全に関わる判断は、人の承認を前提とします。

小さく始める手順

現場安全AIは、既存の施工管理や安全管理のシステムを入れ替えず、その上に重ねる判断レイヤーとして加えます。企業は、手元にある作業計画や点検記録のCSVから始められます。

最初に、企業は対象とする工種や作業を絞ります。たとえば、高所作業だけ、重機の作業だけといった範囲です。次に、担当者が過去の点検記録とヒヤリハットの報告をCSVに整理します。PoC の期間は、3〜8週が目安です。

PoC では、担当者がAIの判断と職長の判断を並べて確認し、次のような指標を測ります。数値の目標は、現状を測ってから現場と相談して定めます。

  • AIが挙げた作業のうち、実際に対応が必要だった割合
  • 見落としていた危険を、AIが事前に挙げた件数
  • 職長の確認にかかる時間
  • 確信度ごとの、AIと職長の判断の一致度
  • ヒヤリハットの報告件数の推移
対象の絞り込み、データの用意、PoCでの試行、指標の測定という4つの手順を矢印でつないだ図
図4:既存のシステムはそのままに、一つずつ確認しながら進めます。

現場の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。まず、危険の見落としが起きやすい作業から試すことをお勧めします。

よくある質問

現場安全AIは、既存の施工管理システムを入れ替える必要がありますか。

入れ替える必要はありません。既存のシステムの上に重ねる判断レイヤーとして加えます。

どのようなデータが必要ですか。

作業計画や点検記録、ヒヤリハットの報告をまとめたCSVがあれば始められます。必要なデータの範囲は、PoCの設計の中で、クラスフォックスが担当者と一緒に確認します。

どのくらいの期間で試せますか。

PoCの期間は3〜8週が目安です。企業が1つの工種や作業に絞って始めると、短い期間で確認できます。

トップ画像の写真:Photo by Glenov Brankovic on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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