AIで何が出来るのか
昨今、ニュースや仕事を通してAIという単語を頻繁に聞くようになりました。
しかし、「AIという単語は知っているけど詳しい内容は分らない」という方や「AIが自分たちの生活の一部になりつつあることは認識しているけど具体的にどういう影響を与えているのか分からない」と感じている方が多いのではないでしょうか?
AIは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)」の略です。それぞれの単語を日本語に訳すと「Artificial=人工的な」「Intelligence=知能」という意味合いです。それぞれを組み合わせて「人工知能」と訳されたものですが、実はAIの専門家や研究者の間でも、AIの定義は統一されていません。
また、「AIで何ができるのですか」との質問を頂くことも多いですが、AIの定義と同様、なかなか難しい質問です。
今回はAIで何が出来るのか、そしてイメージをしやすくする為に私たちの身近で活用されているAIをご紹介します。
まずは、AIで出来ることをざっくりと2つに分けて整理してみます。
「データ活用のステップ」の観点
1つは「データ活用のステップ」の観点でAIを3つの領域「識別」「予測」「実行」に分類する捉え方です。
「識別」は音声認識や画像認識、動画認識、言語解析などに該当します。
「予測」はマッチングやニーズ予測、数値予測、意図予測などに該当します。
「実行」は作業の自動化や行動最適化、表現生成、デザインなどに該当します。
これらは人間の知的行動プロセスを表しているとも言えます。
「適応領域別」に分ける捉え方
もう1つは「適応領域別」に分ける捉え方です。
1.「知識検索・俯瞰」
FAQの自動生成やQA業務支援などのように知識を大量のデータから探し出す、大量のデータを俯瞰することを指します。
2.「コンテンツ生成」
作曲や文章の自動生成のなどように大量のデータを参考に自動でコンテンツを生成する
3.「知識発見・意思決定」
自動診断や審査の効率化などのように意思や行動の決定を自ら行う
4.「コミュニケーション」
ロボット対話や音声認識などのように人間との対話を通じてサービスを行う
5.「知覚・制御」
自動運転や信号機制御のように環境や状況を把握して自立制御を行う
こちらの考え方のほうが「AIでやりたいこと」をイメージし易いかもしれません。
身近なAI活用事例
それでは具体的にどのようなことが出来るのか、既に身の回りで活用されているAI活用事例をご紹介していきます。
検索エンジンの最適化
最も身近に感じられると考えられるのが、Googleなどのインターネット検索です。
キーワードや、滞在時間、直帰率など膨大な検索行動からAIが学習をして、それぞれのユーザーの検索意図の理解を進めることで、最適な検索結果を導き出してくれています。
データをまとめ、ラベル付けを行い、分類、構造化することで適切な検索結果を表示するのみならず、有害なページや質の低いページを排除してくれることにより、ユーザーが心地よく検索行動を行える環境を作っています。
他にもGoogleレンズのアップデートにより、鼻歌を歌うだけでその曲を教えてくれたり、本の映像からどんな言語で書かれているかを理解し、読み上げることが可能になるなど、検索という身近に感じる行動も日々、大きな進化を遂げているのです。
AIチャットボット
チャットボットとは音声やテキストに反応して自動で応答をしてくれるテキスト会話サービスのことです。
チャットボットを活用することにより、24時間いつでもユーザーからの問い合わせに対応可能になります。チャットボットの使用目的は大きく3つに分けられます。
1.ユーザーの質問に回答する質問応答型チャットボット
特に多く活用されているのがカスタマーサポートやヘルプデスクで使われる「ユーザーの質問に回答する質問応答型チャットボット」です。
FAQ(よくある質問)ページなどに記載している内容の質問をチャットボットに対応させることにより、高度な質問や重要なクレームに人手を割けるようになります。
他にも「ゴミをどう分別すればいいかわからない!」など地域住民をサポートするチャットボットが各自治体で導入され始めています。
2.ユーザーとの会話で商品の購入や予約に繋げるサービス代行型チャットボット
ユーザーとの接点が増やし、ブランドのファン化を狙える「サービス代行型チャットボット」も各企業が導入し始めています。
代表的な活用法として、ユニクロ、ヤマト運輸、ライフネット生命の取り組みをご紹介します。
ユニクロのアプリ内に設置されている「ユニクロIQ」はユーザーごとの好みや季節に応じたおすすめコーディネートを提案や、在庫確認などを行ってくれるサービスを通して新しい購買体験を提供しています。
ヤマト運輸は、「配達時間の指定」「再配達の依頼」「集荷依頼」などをLINEのチャットボットで対応することにより、顧客満足度を上げ、再配達のコスト削減に役立てています。
ライフネット生命は、LINEで生年月日・性別・希望などをガイダンスに応じて入力すると、自分にあった保険の見積や診断を案内してくれるサービスにより、保険に対する敷居を下げて見込客との接点を増やしています。
3.キャラクターを演じてユーザーに会話を楽しんでもらうエンターテイメント型チャットボット
2017年に放送されたTVドラマ『過保護のカホコ』に登場する主人公をキャラクターに設定したAIチャットボット「AIカホコ」や、2019年4月に放送されたTVドラマ『あなたの番です』に登場するAIキャラクターに設定したAIチャットボット「AI菜奈ちゃん」など。「AI菜奈ちゃん」のAIチャットボット総会話数が2億9,000万回を記録するなど大きな反響を呼びました。
また、佐藤健の公式LINE BOTを友達登録すると、メッセージのやり取りが可能になり彼女気分が味わえる…と話題になりました。
スマートスピーカー
スマートスピーカーは対話型の音声操作に対応したAIアシスタントを利用可能なスピーカーで、AIスピーカーとも呼ばれます。
チャットボットのような言語理解に加えて音声をテキスト変換するための音声認識と、テキストを音声に変換するための音声合成のAIを使用しています。
正確にはスマートスピーカー本体にAIが搭載されているのではなく、インターネットを経由してクラウド上のAIアシスタントに接続しています。
代表的なスマートスピーカーである「Alexa(アレクサ)」を搭載したAmazon Echo、「Google Assistant」を搭載したGoogle Home、「Clova」を搭載したLINE Clovaなどは家電量販店やテレビCMなどでもよく耳にすると思います。
これまではPCやスマートフォンを介してインターネットでの検索や商品の注文、または音楽再生などを行っておりましたが、スマートスピーカーの使用により、画面をタッチしたりキーボード操作が不要となり「音声」のみで、それらを行えるようになりました。
また、照明・テレビ・エアコン、お掃除ロボットなどと接続することにより家電の操作も「音声」のみで行えるようになり、毎日の生活を心地よくサポートしてくれます。
議事録の自動作成
会議や取材での発言のメモを取り議事録を作成するという作業はとても手間がかかりますが、この手間のかかる作業をAIが行ってくれます。
会話を高精度で音声認識するためにはクリーンな音声収録をする必要があり、AIによる認識謝りに対して人手による修正が必要など、まだ完璧とは言えませんが、音声のテキスト化や重要度判定の向上により、既に人が手打ちで1から作り上げるよりも効率的に議事録の作成が行えます。
会話の内容を分析して、だれがいつまでに何をするべきかを整理してくれるAIも誕生し始めており、議事録はAIに任せるという社会はそう遠くありません。
AIの今後
さて、既に我々の生活の一部となりつつあるAIですが今後のAIを活用した世界はどのようなものになるのでしょうか?
2045年頃には「人類の全知能を合わせたよりもほんの少し優秀な知能を持つAIが誕生する」「AIが自分よりもほんの少し優秀なAIを作り出せるようになる」など加速度的に進化するAIが人類の英知をはるかに超えると言われています。
そんなシンギュラリティに到達することに懐疑的な研究者も多いですが、AIが進化し続けていることは間違いありません。
2013年に英オックスフォードのオズボーン准教授らが「今後10年から20年以内に47%もの仕事が人工知能(AI)に奪われる」という内容の論文を発表したてからは「人工知能(AI)に仕事を奪われる」という話題がマスコミを賑わせました。
一般事務員、銀行員、コンビニやスーパーの店員、ファイナンシャルプランナー、師士業(税理士、会計士、司法書士、社会保険労務士など)、生保営業、薬剤師、タクシードライバーなど多くの仕事がAIに奪われると予測されています。
今回の記事内でご紹介したチャットボットを始めとして、コンビニの無人レジ化など、消費者体験を通し、既にその流れを体感し始めている方も多いかと思いますが、人よりもAIの方が作業効率が上がる業務や、データに基づいた単純業務、AIが人の代わりに全てをこなせる業務はAIに代替されやすいと考えられています。
そんなAI時代を迎えるにあたり、不安を感じる方も多いと思いますが、もちろんマイナスなことばかりではありません。
人口減少による日本社会にとっては業務の効率化による生産性の向上は労働力不足を補う為に欠かせないものになるでしょう。
また、災害対策への救助ロボットの活用を始めとして医療技術や防犯システムの高度化など、様々な面でより良い社会の実現を期待をされています。
AI時代を生き抜くためには「AIを活用できる人材になる」ことが重要だと考えます。
今後も@DXではAIを活用した多くの事例を紹介していきますので、参考にしていただければ幸いです。