ブロックチェーンはDXにどう活かせる?事例4選!

グローバルインフォメーションのレポート「ブロックチェーンの世界市場」によると、その市場規模は、60億米ドル(2021年)から567億米ドル(2026年)まで拡大すると言われています。

米国や中国はブロックチェーンの普及を国家戦略に据えるなど、世界的に注目度は高く、仮想通貨以外のユースケースも増えてきています。しかし、日本ではまだ実用化に至っているケースが少なく、遠い存在の技術と感じている人も多いのではないでしょうか?

この記事では、先進的にブロックチェーンを取り入れている企業が、どのようにビジネス変革を起こしているのか、DXの事例を紹介したいと思います。

(ブロックチェーンの技術概要を確認されたい方はこちらの記事をご覧ください。)

ブロックチェーンでビジネスはどう変わる?

経済産業省の報告書によれば、ブロックチェーン技術によって大きく5つの分野で変革が起こると言われています。

01. 価値の流通・ポイント化、プラットフォームのインフラ化
02. 権利証明行為非中央集権化の実現
03. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
04. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
05. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料

出所:経済産業省「平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料」

発表されたのが2015年と古いため、市場規模については見直されていますが、ブロックチェーン技術でビジネスがどう変わるのか、初学者にとっては大まかに理解しやすいものとなっています。

ブロックチェーンを活用したDX事例

前章で紹介した、『ブロックチェーン技術による社会変革の可能性』に沿って、ブロックチェーン技術をビジネスに活用している事例をみてみましょう。

FCバルセロナ(ファントークン )

「01 価値の流通・ポイント化」の事例として紹介するのが、スペインのサッカークラブFCバルセロナです。FCバルセロナは「バルサファントークン」というデジタル資産を発行しています。トークンとはサービス利用券のようなもので、「バルサファントークン」 はSocios.comというアプリで購入または無料獲得することができます。

バルサファントークンを保有しているファンは、投票イベントへの参加や、特別体験(選手交流会への参加、VIP観戦、選手からのメッセージなど)、クラブ公式ショップでの優待、ファン同士の交流など、チームとより深い関わりを持つことができ、更なる愛着を形成していきます

また、ファントークン はデジタル通貨の役割も果たすため、購入時より値段が上がっていれば、売却益を得ることもできるのです。一方通行のファンクラブ会員費ではなく、自身の資産形成にもなるのですね。

チームにとって、ファントークンを発行することは、大きく二つのメリットがあります。
①ファンとの繋がり強化によって更にチームの人気を高め、クラブの持続性を高める
②ファントークンの販売収益を活動資金に活用することができる

このように、クラブチームとファンの間で、一つの経済圏を作り出すファントークン。近年広がりを見せており、欧州のACミランやユベントスだけでなく、日本でも湘南ベルマーレなどが取り組んでいます。

トレードワルツ・日本の貿易プレイヤー(貿易プラットフォーム)

「02 権利証明行為の非中央集権化」「05 プロセス・取引の全自動化・効率化の実現」の事例として紹介するのは、トレードワルツを中心とした日本の貿易プレイヤーです。トレードワルツは、NTTデータや三菱商事など日系大手企業7社が共同出資した会社で、貿易の電子化を実現する貿易プラットフォーム 「TradeWaltz」を運営しています。

これまでの貿易事務は、貿易書類(信用状、船荷証券、保険証券など)の原本性を担保するために、紙を中心とした実務がベースで、データの入力や書類の保管など余分なコストを生み出していました。

ところが、ブロックチェーンを活用した「TradeWaltz」を利用することで、紛失や改ざんの恐れのないデジタル環境に原本データを保存することができるようになったのです。

それによって、貿易に関わる様々なプレイヤー(輸出者・輸入者、運輸・物流企業、銀行、保険会社、行政機関)は、各種書類の作成コスト低減、書類紛失・盗難・改ざんリスクの低減、貿易にかかるリードタイムの短縮、郵送コストの削減など多くのメリットを享受しています。

関わる企業のデジタイゼーションを実現してDXの土台を築くだけでなく、「TradeWaltz」に蓄積されたデータを活用することで新たな金融商品を開発するなど新規ビジネスの機会も期待されています。

エイベックス(著作権流通システム)

「03 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現」の事例として紹介するのは、日本のエイベックスです。エイベックスは、著作権などの情報を一元管理するシステム「AssetBank」の試験運用を開始しました。 「AssetBank」は、JCBI*のブロックチェーン上に開発されています。

デジタルコンテンツは簡単にコピーできるため、勝手に二次利用されてしまうなど、然るべき対価が著作権保有者に支払われず、業界の拡大を妨げる要因ともなっています。

しかし、著作権の保有者が、さまざまなデジタルコンテンツ(楽曲・画像・イラスト・テキストなど)を「AssetBank」に登録することで、消費されるたび、または、二次利用されるたびにクリエイターにお金が入るようになるのです。

「AssetBank」は無償で提供されるため、エイベックスは直接的に収益を得るわけではありません。しかし、この仕組みによって、主要事業であるデジタルコンテンツ業界のビジネスモデルを変革し、規模を拡大させ、自社のビジネス拡大につなげていくものと考えられます。

(*)JCBI:Japan Contents Blockchain Initiative, ブロックチェーン技術を活用してコンテンツの著作権情報を安全に管理できるシステムを共同運用するためのコンソーシアム

フォード(原材料・動力源のトレーサビリティ)

「04 オープン・高効率・高信頼なサプライチェーン」の事例として紹介するのは、アメリカの自動車メーカーであるフォードです。フォードは、ブロックチェーンを活用して原材料や燃料のトレーサビリティ向上に取り組んでいます。

電気自動車に欠かせないリチウムイオン電池を製造するには、”コバルト”という鉱物が必要です。
”コバルト”は、そのほとんどがコンゴ民主共和国で採掘されており、環境破壊や児童労働などが問題視されていました。

フォードは、認証した鉱山(環境への負荷が低い方法で採掘されており、児童労働や危険労働がないと確認されている場所)で採掘されたものであることをブロックチェーン上に記録し、クリーンな原材料を使用していることを証明できるようにしているのです。

また、ジオフェンシング技術*とブロックチェーンを掛け合わせて、PHEV*の動力源のトレーサビリティにも取り組んでいます。

欧州では、低排出ガスエリアを設定している地域があります。(排ガス規制を満たさない車両は通行料がかかる。)
PHEVは、電気とガソリンの切り替えができるため、低排出ガスエリアでは電気を動力源として走行する必要がありますが、フォードは、低排出ガスエリアに入ると、自動でEV走行に切り替え、その事実をブロックチェーンに記録することができるのです。

対改ざん性の高いブロックチェーン技術を活用して原材料や動力源のクリーンさを提示することは、ESGへの本気度を示し、消費者や投資家からの評価を高めることに繋がります。

(*)PHEV:Plug-in Hybrid Electrical Vehicle, 2種類以上の動力源を備えており、外部電源からの充電が可能な車両 
(*)ジオフェンシング:車が特定の地域に出入りしたことを認識して、定められた動作を行う技術

まとめ

この記事では、ブロックチェーンの技術によって起こる5つの変革分野毎に実例を紹介しました。

ブロックチェーン技術は、既存業務のデジタル化だけでなく、顧客視点の価値を生み出し、ビジネスモデルの変革を生み出しうる技術です。

自社のビジネス変革に活用できる余地があるかどうか、是非検討してみてください!

(参考資料)
socios.com. “バルサファンが$BARファントークンを手に入れるべき10の理由.”
FC BARCELONA. “バルサとブロックチェーンプラットフォーム、チリーズ、ファンとのインタラクション増加を求めて提携.”
TradeWaltz Inc. “オープンでグローバルな 貿易エコシステムをめざして.”
avex. “プレスリリース“.
avex. “INTERVIEW“.
Ford. “FORD STUDY SHOWS BLOCKCHAIN, DYNAMIC GEOFENCING AND PLUG-IN HYBRID VANS CAN HELP IMPROVE URBAN AIR QUALITY
Ford. “RESPONSIBLE MATERIAL SOURCING

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