業務の効率化や働き方の改革として、多くの企業でDX化が推進されるようになりました。まだまだ導入事例は少ないものの、ホテル・宿泊業界でもDX化の導入が進んでいます。
今回の記事では、ホテル・宿泊業界でのDX推進事例をご紹介します。どのようなDX化の施策が行われているのかを参考にしながら、課題解決に取り組んでみましょう。
ホテル・宿泊業界でDX化が求められている背景
多くの業界でDX化の導入が進んでいますが、なぜホテル・宿泊業界でもDX化が求められるようになったのでしょうか。
DX化の推進事例をご紹介する前に、ホテル・宿泊業界でDX化が求められている背景について解説します。
インバウンドの需要拡大
ホテル・宿泊業界でDX化が求められている理由に、インバウンドの需要拡大が挙げられます。2020年は新型コロナウイルスの影響で落ち込んだものの、2019年の訪日外国人は3,188万人に上りました。多くの外国人が日本観光を楽しむようになった現在において、DXを活用したよりよいサービスを提供する必要があります。
少子高齢化による人材不足
日本社会の深刻な少子高齢化は、ホテル・宿泊業界にも大きな影響を与えています。とくに、地方では人材を確保しにくくなり、人材不足や経営危機に陥る宿泊施設も少なくありません。そこで、人材不足をカバーするためにも、DX化によるサービスの無人化・自動化が必要となっています。
競合との差別化
インバウンド需要の拡大に伴い、ホテル・宿泊施設の激しさが増しています。とはいえ、競争に打ち勝つためには、他社との差別化が必要です。サービス面の向上だけでなく、DX化を推進し、顧客体験を向上させることがポイントとなります。
ホテル・宿泊施設業界におけるDX推進5つのポイント
それでは、実際にホテル・宿泊業界で、どのようにDXが活用されているのでしょうか。
DX化によって、顧客満足度の向上や、従業員の負担軽減などに成功したポイントをご紹介します。
①「多言語での接客に対応し、顧客満足度向上」
1つ目のDXの活用事例は、多言語での接客対応です。
冒頭でも解説したとおり、インバウンドによる訪日外国人観光客が増加するなかで、日本語だけでなく、外国語での接客対応が求められるようになりました。とはいえ、各言語をマスターした従業員を新たに採用するにはコストや時間がかかり、経営的にもリスクを負ってしまいます。
そこで、外国人相手とのコミュニケーションを最適化するために、多言語に対応した翻訳・通訳ツールの導入が成功の鍵となります。翻訳・通訳ツールのなかには、自動音声機能だけでなく、プロの通訳家を介した音声通話も可能で、リアルタイムで正確なコミュニケーションが可能です。
英語・中国といったメジャー言語に加え、訪日需要が増加している東南アジアの言語や、ヨーロッパの言語に対応した翻訳・通訳ツールを導入することで、世界各国の観光客と不自由のないコミュニケーションを実現し、顧客満足度の向上を期待できます。
②「混雑状況の可視化により、宿泊者の待ち時間を減少」
DX化により成功した2つ目の事例は、ホテル・宿泊施設内での混雑状況の可視化です。
とくに、規模の小さい宿泊施設の場合、レストランや浴場、売店などに宿泊者が集まり、不便を強いられてしまうことが少なくありません。サービスを利用するために長時間待つ必要が出たり、宿泊者がサービスを利用できないまま営業時刻が過ぎてしまったりといった、不満を抱えるきっかけになります。
混雑状況の可視化は、すでに公共交通機関やアミューズメントパークなどで採用されている施策です。ホテル・宿泊施設でも、同様に混雑状況を可視化することで、宿泊者の流れをスムーズにし、不満を取り除くことが可能となります。
③「予約管理システムの簡素化し、従業員の負担を軽減」
3つ目の推進事例は、ホテル・宿泊施設での予約管理システムの簡素化です。
ホテル予約サイトや、自社ホームページなどで予約を取る宿泊施設が増えているものの、依然として電話・メールといったアナログ的な方法で予約を受け付けている老舗旅館もあります。もちろん、アナログ的なシステムでも予約管理を行えますが、予約変更・キャンセルに伴う手間の発生や、繁忙期は従業員にとって業務の負担増加につながりかねません。
ホテル予約サイトは、利用手数料が発生する一方で、予約管理やカスタマーサポートなどを代行してもらうことができます。とくに、人的リソースが限られているホテル・宿泊業界では、いかに従業員の負担を軽減し、顧客満足度を向上させるかが重要です。
④「宿泊施設の保守・点検作業の自動化で安全性の向上」
ホテル・宿泊業界での4つ目のDX推進事例は、宿泊施設の保守・点検作業の自動化です。
宿泊施設の設備を保守・点検を行う際に問題となるのが、人的ミスです。作業員によって判断基準が異なるほか、火気やガス設備などの点検作業は、スタッフに危険を及ぼす可能性があります。
そこで、設備関連の状況をセンサー・AIカメラなどでモニタリングをすることで、人間では気づきにくいような細かい変化も可視化されるようになります。初期段階での対応も可能となり、施設全体としての安全性の向上にも役立ちます。
⑤「館内掃除ロボットや無人チェックインシステム導入による人件費削減」
最後に、5つ目のDX推進事例は、館内掃除ロボットや無人チェックインシステム導入です。
ホテル・宿泊業界では、少子高齢化や経費圧迫などが課題となるなかで、どのような部分で人的リソースを削減するかが重要となります。とはいえ、必要な部分までスタッフを削減してしまうと、顧客満足度や宿泊施設としての価値低下につながる恐れがあります。
人件費を削減するためには、自動化を行える部分は徹底的にDX化を進めることが大切です。たとえば、館内清掃の一部でロボットを導入したり、チェックイン業務を無人システムを利用したりすることで、必要なスタッフを配置しながら、顧客満足度を維持できます。
まとめ
人材不足や訪日外国人需要の拡大などに対応するためには、ホテル・宿泊業界でもDX化の推進が重要となります。まずは、どのような点に課題を抱えているのかを把握し、DX化で課題を解決できるかを検討することが大切です。本記事でご紹介したDX化の推進事例を参考に、宿泊施設としての価値向上を実現しましょう。