この記事の要点
- AIが、各勤務枠にどの職員を配置するのが最適かを、確率と確信度つきで判断します。
- 管理者が夜遅くまで一人で組むシフト表から、資格や相性を踏まえた案を見て決めるシフトに変わります。
- 勤務表のCSV(表形式のデータファイル)から始め、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で指標を測ります。
シフト配置AIは、介護施設の各勤務枠にどの職員を配置するのが最適かをAIが判断し、資格や相性を踏まえたシフト案として管理者に示すしくみです。本記事では、AIが何を判断するのか、導入後の施設の1日がどう変わるのか、どこまでをAIに任せるのか、小さく始めるにはどうするのかを、順に解説します。
介護施設のシフト作成で起きていること
介護施設のシフト表は、多くの場合、施設長やフロア長などの管理者が組んでいます。勤務時間が終わったあとの夜に、表計算ソフトを開いて一人で組む施設も少なくありません。
シフト表は、人数を満たすだけでは成り立ちません。夜勤に入れる職員、特定の資格を持つ職員、利用者の送迎や入浴の介助に必要な人数など、満たすべき条件が重なります。
職員同士の相性も、配置を考えるうえで欠かせません。経験の浅い職員は、教え方の丁寧な先輩と同じ枠に入ると安心して働けます。こうした事情は、管理者の頭の中にある情報で調整されることが多くあります。
そのため、急な欠勤や希望休が出るたびに、管理者は表を組み直します。条件を一つ動かすと別の枠に影響が及び、全体を見直す必要が生じます。この作業が、管理者の負担と、特定の人への依存を生んでいます。
見直しが必要だと感じていても、管理者が時間を確保するのは容易ではありません。シフト表を組む作業は、利用者のケアや職員への声かけと同じ時間帯に重なります。また、管理者が不在のときは、誰も代わりに組めないという事態も起こります。

シフト配置AIが判断すること
AIが判断するのは「最適職員」です。判断のパターンでいえば「資源の配置」、つまり、限られた職員という資源を、どの勤務枠に配るかという問いです。
AIは、職員の資格、勤務の希望、連続勤務の状況、過去の配置の組み合わせなどを手がかりに判断します。Decision AI は、文章を生成するのではなく、業務の「判断」だけを確率と確信度つきで返すAIです。答えは次の3つの型で返ります。
| 答えの型 | この業務での問い |
|---|---|
| はい/いいえ | この職員を、この勤務枠に入れてよいか。資格や勤務間隔の条件を満たすか |
| どれを選ぶか | この勤務枠に入れる職員の候補のうち、誰を配置するか |
| どの程度か | 各配置案の、条件への適合度と職員の負担の偏り |
答えが型で返ってくるため、管理者は案をそのまま見比べられます。管理者が一から配置を考えるのではなく、AIが出した候補を見て、最終的な配置を決める形になります。
導入後の介護施設の1日
たとえば、日中の通所介護と夜間の入所を併せ持つ施設で、来月分のシフトから使い始めた場合を考えてみます。
朝、管理者は画面で、AIが出した来月のシフト案を確認します。案には、資格の条件を満たしていない枠や、同じ職員に夜勤が続く箇所に印が付いています。管理者は、印の付いた箇所から順に見ていきます。
日中、フロア長は職員の希望と案を見比べます。経験の浅い職員と教育担当の先輩を同じ枠に入れたいときは、その条件を伝えて、案を出し直してもらいます。AIは条件を踏まえた別の候補を示し、フロア長が選びます。
夕方、急な欠勤の連絡が入ったとします。管理者は、代わりに入れる職員の候補を確認します。候補は、資格と勤務間隔の条件を満たす順に並んでいるため、電話をかける順番に迷いません。
夜、管理者は決まったシフトを職員に共有して、1日を終えます。管理者は、夜遅くまで表を組み直す時間を減らし、確認と判断に時間を使えるようになります。

AIに任せる範囲をどう決めるか
AIの答えには確信度が付きます。この確信度で、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを決めます。
- 確信度95%以上:資格も勤務間隔も条件を確実に満たし、影響が小さい配置です。そのままシフト案に入れます。
- 確信度70〜95%:新人と先輩の組み合わせなど、職員への影響が大きい配置です。管理者が確認してから決めます。
- 確信度70%未満:入職して間もない職員や、特別な配慮が必要な利用者を担当する枠です。施設長やフロア長が判断します。
たとえば、同じ職員に夜勤が続く案は、条件を満たしていても、職員の負担の面から管理者が確認する対象にできます。このように、確信度の段階だけでなく、施設の方針も加えて範囲を設計します。
この基準は、最初から決め打ちにはしません。PoCで実際の結果と照らし合わせて、確かめながら定めます。はじめはすべての案を管理者が確認し、AIの判断と管理者の判断が一致する範囲を見ながら、任せる範囲を少しずつ広げます。なお、最終的な配置は、人の承認を前提に設計します。

シフト配置AIを小さく始める手順
いま使っている勤怠管理やシフト管理のシステムは入れ替えません。AIはそれらの上にのる「判断レイヤー」として入り、まずは手元のCSVから始められます。
- 過去の勤務表、職員の資格、勤務の希望をCSVで書き出します。対象は、1つのフロアや1つの事業所に絞ります。
- AIのシフト案と、管理者が実際に組んだシフトを、机上で比べます。この段階では、実際の運用は変えません。
- 合意できた案から、実際のシフト作成で使い、指標の変化を確認します。
PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。
- シフト作成にかかる時間
- 急な欠勤時に代わりの職員が決まるまでの時間
- 資格や勤務間隔の条件を満たしていない枠の件数
- 職員ごとの勤務や夜勤の偏り
- 管理者がAIの案を修正した割合
目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから一緒に定めます。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。

介護・福祉の判断を支えるほかのAI
介護の現場には、シフトのほかにも、毎日くり返される判断があります。たとえば、転びやすい兆しを捉える「転倒リスクAI」や、訪問の順路を示す「訪問介護ルートAI」があります。いずれも、最終的な判断は職員が行う設計です。
よくある質問
いま使っているシフト管理のシステムは入れ替える必要がありますか
入れ替える必要はありません。AIは既存のシステムの上にのる判断レイヤーとして入り、まずは書き出したCSVで始められます。
どのようなデータが必要ですか
過去の勤務表、職員の資格、勤務の希望が基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で足りないデータを確認します。
どのくらいの期間で試せますか
PoCは3〜8週が目安です。週ごとに結果を見ながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。
トップ画像の写真:Photo by Adhitya Sibikumar on Unsplash
本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。
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