成約に近いお客様をAIが見極める「見込客AI」の活用シーン

この記事の要点

  • AIが、見込客ごとの成約確率を確信度つきで示し、どのお客様から連絡するかの優先順位を判断します。
  • 来店順に追いかける追客から、成約に近いお客様へ時間をかける追客に変わります。
  • 顧客管理の表をCSV(表形式のデータファイル)で出すだけで始められ、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で連絡の質と成約までの流れを測ります。

見込客AIは、不動産の営業現場で、来店や問い合わせのあったお客様のうち成約に近い方をAIが判断し、連絡の優先順位を示すしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、営業責任者や店長、営業担当者の判断を支えます。本記事では、AIが何を判断するのか、営業現場の1日がどう変わるのか、どの範囲まで任せるのか、どう小さく始めるのかを順に説明します。

来店順の追客が抱える課題

不動産の営業担当者は、来店や問い合わせのあったお客様に、順番に連絡して関係を築いていきます。来店の順に追いかける方法は分かりやすい一方で、成約に近いお客様と、情報収集の段階にとどまるお客様が、同じ重さで扱われがちです。

木の机に置かれた住宅の模型と鍵
来店したお客様と物件をつなぐ追客の場面を、住宅と鍵で表しています。 Photo by Tierra Mallorca on Unsplash

担当者は、限られた時間の中で、誰に連絡するかを日々選んでいます。この選び方は、経験や記憶に頼る部分が大きく、担当者ごとに基準が異なります。引き継ぎの場面では、その基準が共有されないまま、お客様の温度感だけが失われることもあります。

たとえば、週末に来店が集中した翌週を考えてみます。営業担当者は、数多くのお客様の記録を前に、誰から連絡するかを迷います。迷っている間にも、検討を進めているお客様は、他の不動産会社に相談を始めるかもしれません。連絡の順序は、成約の機会に直結する判断です。

その結果、本来すぐに連絡すべきお客様への対応が遅れたり、見込みの薄いお客様に長く時間を使ったりする状況が生まれます。見込客AIは、この「誰から追いかけるか」という判断を支えます。

来店順の追客から、成約に近いお客様から時間をかける追客への変化を比べた図
図1:追客のやり方は、来店順から成約確率の順に変わります

見込客AIが判断すること

見込客AIが判断するのは、お客様ごとの「成約確率」です。判断のパターンは「優先順位づけ:何を優先するか」にあたります。多くのお客様の中から、どのお客様を先に追いかけるかを、確率と確信度つきで並べて示します。

Decision AI は、文章を生成するAIではなく、業務の判断だけを返すAIです。答えの型は3つあり、見込客AIでは次のように使います。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこのお客様に、今週中に連絡すべきか
どれを選ぶか数多くのお客様のうち、どのお客様から追いかけるか
どの程度かこのお客様が成約に至る可能性は、どの程度か

導入後の1日:営業担当者の追客を描く

たとえば、来店と問い合わせが日々入る不動産の店舗を考えてみます。ここでは、導入後の1日を時間の流れで描きます。

朝、営業担当者は、顧客管理の画面で、AIが並べた「今日連絡すべきお客様」の一覧を確認します。一覧には成約確率と確信度が示されるため、担当者は、どのお客様に先に連絡するかを短時間で定められます。

日中、営業担当者は、一覧の上位にいるお客様へ、内見の提案や条件の確認を進めます。確信度の低いお客様は、AIの判断だけに頼らず、担当者が過去のやりとりを読み直してから連絡します。

夕方、営業担当者は、その日の連絡結果を顧客管理に記録します。店長は、チーム全体の追客の状況を見渡し、確率の高いお客様に手が回っているかを確認します。記録された結果は、翌日以降のAIの判断を見直す材料にもなります。

朝の一覧確認から夕方の結果記録までの、営業担当者の1日の流れを示した図
図2:導入後の1日は、一覧の確認から結果の記録までひと続きになります

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの判断は、確信度によって任せる範囲を分けます。目安は、95%以上は自動で処理し、70〜95%は担当者が確認し、70%未満は上長や専門家へ回す、という3段階です。閾(しきい)値は、PoCで確かめて決めます。

見込客AIの場合、確信度の高い判断は、連絡の優先順位の自動更新に使えます。中間の判断は、営業担当者が一覧を見て、連絡の順序を確認します。確信度の低いお客様は、店長や経験の豊富な担当者が、状況を読み解いて判断します。

この分け方には、担当者の負担を減らす狙いがあります。確信度の高い判断は自動で処理されるため、担当者は、迷いやすいお客様への対応に時間を使えます。確認の基準が明確になるので、担当者ごとの判断のばらつきも抑えられます。

なお、物件の提案や契約の条件など、最終判断が必要な業務は、人の承認を前提に設計します。AIは判断を示し、決定するのは人です。

確信度を3段階に分け、自動処理、担当者の確認、上長への回付に振り分ける図
図3:確信度に応じて、任せる範囲を3段階に分けます

小さく始める手順

導入の目的は、AIに営業を置き換えることではありません。営業担当者が、成約に近いお客様へ丁寧に時間をかけられる状態をつくることです。そのため、最初の範囲は、特定の店舗や特定の物件種別に絞ります。

見込客AIは、既存の顧客管理(CRM、顧客関係システム)を入れ替えずに、その上にのる判断レイヤーとして加えます。手元の顧客一覧をCSVで出すところから始められます。

まず、過去のお客様について、来店や問い合わせの日、連絡の履歴、結果として成約に至ったかどうかを、表にまとめます。次に、PoCの期間を3〜8週で定め、AIの示した順序と、実際の成約の結果を照らし合わせます。そのうえで、確信度の区切りを決め、運用の範囲を広げていきます。

業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。月額10万円(税別)からの Vertical AI SaaS として、1業務から小さく始め、初期費用はかかりません。

PoCでは、効果を数値で言い切るのではなく、次の指標を測って確認します。

  • 連絡の優先順位と実際の成約の一致の程度
  • 成約までにかかった日数
  • 見込みの高いお客様への初回連絡の速さ
  • 担当者ごとの連絡の偏り
  • 追客にかかる時間の使い方
PoCで測る5つの指標を一覧にした図
図4:PoCでは、5つの指標で結果を確認します

似た判断を担うAI

同じ不動産の領域には、見込客AIと組み合わせて考えられるソリューションがあります。たとえば、問合せAIは、問い合わせの内容から営業の優先度を判断します。物件提案AIは、お客様の希望に合う推奨物件を選びます。

問合せAIが入口で優先度を示し、見込客AIが追客の途中で成約の確率を見直し、物件提案AIが提案する物件を選ぶ、という分担が考えられます。いずれも、1業務から小さく始め、効果を確認しながら範囲を広げます。

よくある質問

既存の顧客管理はそのまま使えますか

はい、そのまま使えます。見込客AIは、既存のシステムを入れ替えず、その上にのる判断レイヤーとして加えます。

データはどれくらい必要ですか

手元の顧客一覧をCSVにしたものから始められます。必要な項目や量は、PoCの最初に確認して定めます。

どのくらいの期間で試せますか

PoCの期間は、3〜8週が目安です。その期間で、AIの判断が営業の現場に合うかを確認します。

トップ画像の写真:Photo by Tierra Mallorca on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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