経費精算の不正・異常をAIが見分ける「経費AI」の活用シーン

この記事の要点

  • 経費AIは、各申請について「不正や異常の疑いがあるか」を、確率と確信度つきで判断します。
  • 経理担当者は、全件を目で追う作業から、不自然な申請にだけ時間を使う作業へ移れます。
  • 手元の経費データのCSVから始め、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で指標を測ります。

経費AIは、経費精算の申請に不正や異常の疑いがないかをAIが判断し、確認が必要な申請だけを経理担当者に示すしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、経理部門の責任者や、バックオフィスのDX推進担当の判断を支えます。本記事では、経費精算の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、AIに任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。

経費精算の確認作業で起きていること

多くの企業では、経理担当者が申請された領収書を1件ずつ開き、金額、日付、使途、規程との合致を目で確認しています。申請の数は月末や期末に集中するため、担当者は限られた時間の中で全件を見なければなりません。

机の上に並べた、記入欄のある複数の書類と筆記用具
経理担当者が日々向き合う、多くの書類の確認作業のイメージです。 Photo by NORTHFOLK on Unsplash

確認の質は、時間の余裕と担当者の経験に左右されます。忙しい時期には、一件あたりに割ける時間が短くなります。規程の細かい例外を把握しているのは一部のベテランに限られ、担当者が変わると見落としの傾向も変わります。

実際に確認が必要な申請は、全体のごく一部であるはずです。それでも、どの申請が該当するのかは見るまで分からないため、経理担当者は問題のない申請にも同じ手間をかけ続けています。

不自然な申請の兆しは、一件ずつ見ていても気づきにくいものです。同じ申請者が似た金額を何度も出している、休日の支出が続いている、承認者が決まった相手に偏っているといった傾向は、過去の申請を並べて比べることで初めて見えてきます。

全件を目で追う経費精算と、不自然な申請だけを確認する経費精算の比較図
図1:全件を目で追う精算から、不自然な申請だけを確認する精算へ

経費AIが判断すること

経費AIが判断するのは「この申請に、不正や異常の疑いがあるか」です。判断のパターンでいえば「リスク・異常の検知」にあたり、「危険か、異常か」を見分ける判断です。

AIは、申請の金額、日付、費目、申請者の過去の申請、同じ費目の一般的な傾向などを手がかりに判断します。Decision AI は文章を生成するのではなく、決めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこの申請に、不正や異常の疑いがあるか
どれを選ぶか確認の担当を、経理担当者・上長・専門の担当者のうちどれにするか
どの程度か各申請の疑わしさの度合いと、確認の優先度

答えが型で返ってくるため、そのまま確認の順番や担当の振り分けにつなげられます。AIが不正と断定するわけではありません。経理担当者が確認する順番を決める材料として、疑わしさを示します。

導入後の経理の1日

たとえば、営業担当者が多く、毎日数多くの経費申請が届く企業で、まず交通費と会議費の申請から使い始めた場合を考えてみます。

朝、経理担当者は画面で前日までに届いた申請の一覧を確認します。申請は疑わしさの高い順に並び、確信度と、そう判断した手がかりが添えられています。経理担当者は、上から順に領収書を開き、実際に確認が必要かどうかを判断します。

日中、問題のない申請は、経理担当者の確認を待たずに承認の手続きへ進みます。経理担当者は、確認が必要な申請について申請者へ問い合わせたり、上長に状況を確認したりします。同じ時間を、全件の目視ではなく、判断が難しい申請に使えるようになります。

夕方、経理部門の責任者は、その日にAIが示した申請と、経理担当者の最終判断との違いを確認します。AIが疑わしいとした申請が実際には問題なかった場合や、AIが見落とした申請があった場合は、その理由を記録し、翌週の判断基準の見直しに生かします。

朝・日中・夕方の順に、経費AIを使った経理担当者の1日の流れを示した図
図2:経費AIを使った経理の1日の流れ

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの答えには確信度が付きます。企業は、この確信度によって、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを定めます。

  • 確信度95%以上:規程に合っていることが明らかで、疑いのない申請です。自動で承認の手続きへ進めます。
  • 確信度70〜95%:金額や費目に気になる点があり、経理担当者が領収書や使途を確認したうえで判断する申請です。
  • 確信度70%未満:過去に似た申請が少ない、規程の例外にあたる可能性があるなど、AIが迷う申請です。上長や専門の担当者が判断します。

この閾(しきい)値は最初から決め打ちにせず、PoCで確認して定めます。はじめはすべての申請を人が確認し、AIの答えと人の判断がどの程度一致するかを見てから、任せる範囲を広げていくのが安全です。また、不正かどうかの最終判断には人の承認が必要です。AIは、疑わしい申請を見つけて優先順位をつける役割にとどめて設計します。

確信度95%以上は自動処理、70〜95%は担当者が確認、70%未満は上長・専門家が判断する3段階の図
図3:確信度に応じて任せる範囲を分ける

経費精算AIを小さく始める手順

いま使っている経費精算のシステムは入れ替えません。AIはそのシステムの上にのる「判断レイヤー」として入り、まずは手元のCSV(表計算ソフトで開ける、カンマ区切りのデータ形式)から始められます。

  1. 経費精算のシステムから、過去の申請データをCSVで書き出します。対象は、特定の費目や部門などに絞ります。
  2. AIが示す疑わしい申請と、経理担当者の過去の判断を、机上で比べます。この段階では、実際の承認の流れは変えません。
  3. 一致した範囲から、実際の確認作業にAIの答えを使い始め、指標の変化を確認します。

PoCの期間は、3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。

  • 経理担当者が確認する申請の件数
  • 一件あたりの確認にかかる時間
  • AIが疑わしいとした申請のうち、実際に確認が必要だった割合
  • AIが見落とした申請の件数
  • 申請から承認までにかかる日数
PoCで測る5つの指標を一覧にした図
図4:PoCで測る指標

目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから、クラスフォックスと企業が一緒に定めます。効果が確認できた範囲を広げ、ほかの費目や業務へ育てていく進め方です。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。

バックオフィスの判断を支えるほかのAI

バックオフィスには、経費のほかにも、毎日くり返される確認の判断があります。たとえば、確認が必要な請求書にだけ手を止める「請求書AI」、メールの対応の優先度を判断する「メールAI」、申請の承認の可否を判断する「稟議AI」などです。どの判断から始めるかは、現場で確認に時間のかかる業務から選ぶのが近道です。

よくある質問

いま使っている経費精算システムは入れ替える必要がありますか

入れ替える必要はありません。AIは既存のシステムの上にのる判断レイヤーとして入り、まずはシステムから書き出したCSVで始められます。

AIが不正と判断した申請は、そのまま差し戻されますか

いいえ、そのままでは差し戻されません。最終判断が必要な業務は、人の承認を前提に設計します。AIは疑わしさを示し、経理担当者が確認して決定します。

どのくらいの期間で試せますか

PoCは3〜8週が目安です。週ごとに結果を確認しながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。

トップ画像の写真:Photo by NORTHFOLK on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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