案件に合う営業担当をAIが割り当てる「担当者AI」の活用シーン

この記事の要点

  • AI(人工知能)が、新しい案件ごとに、どの営業担当が最も適しているかを判断します。
  • 企業は、手の空いた人に回す振り分けから、案件に合う担当者をすぐに割り当てる営業へと移行できます。
  • 企業は、CRM(顧客関係システム)から出した案件と担当の履歴をCSV(表形式のデータファイル)で用意します。そのうえで、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で、振り分けの速さや受注に至る割合などを測ります。

担当者AIは、新しく入った案件に対して、どの営業担当が最も適しているかを判断し、割り当てを提案する仕組みです。この仕組みは、クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS(SaaS:インターネット経由で利用するソフトウェア)の一つです。営業部門長、営業企画、インサイドセールスの責任者の判断を支援します。本記事では、案件振り分けの現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、AIに任せる範囲の決め方、始める手順を順に解説します。

営業の案件振り分けで起きていること

多くの営業組織では、問い合わせや資料請求で入った案件を、営業部門長やインサイドセールスの担当者が営業担当者に振り分けています。振り分けの基準は、手が空いているか、新規案件の順番が回ってきたかなど、その時点の都合になりがちです。

この方法は公平で簡単ですが、案件の中身が考慮されません。たとえば、製造業の案件を、その業界に不慣れな担当者が受け持つことがあります。大規模な案件を、経験の浅い担当者が受け持つこともあります。

案件と担当者が合っていないと、営業担当は初回の商談で業界用語の確認から始めることになり、顧客からの信頼を得にくくなります。また、準備に時間がかかり、他の案件への対応も遅れます。

最適な担当者を選ぶ材料は、CRMの中に多く残っています。過去の案件で担当した業界、規模、商談の進み方、担当者ごとの得意分野などです。しかし、案件が入るたびに部門長がこれらを見比べるのは現実的ではなく、結果として「手の空いた人に回す」という運用が続きます。

手の空いた人に回す振り分けと、担当者AIが相性で割り当てる振り分けを左右に並べた比較図
図1:振り分けの基準が、その時点の空き状況から、案件と担当者の相性に変わります。

担当者AIが判断すること

AIが判断するのは「案件ごとの営業担当」です。判断のパターンでいえば「振り分け」にあたり、AIは誰を・どこへ回すかを決めます。

AIは、案件の業界、規模、問い合わせの内容、過去の商談の経過、担当者ごとの経験と現在抱えている案件数などを手がかりに判断します。判断特化型AI、または意思決定AIのことをDecision AI と言います。Decision AI は、文章を生成するのではなく、あらかじめ定めた質問に対して、定めた型どおりの答えを確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこの案件を、この担当者に任せてよいか。上位者の同席が必要か
どれを選ぶか複数の担当者の候補のうち、誰に割り当てるか
どの程度か各担当者と案件の相性の度合い、割り当ての優先度

答えが型で返ってくるため、企業はその答えをそのままCRMの担当者欄や通知につなげられます。部門長が案件ごとに考えるのではなく、AIが出した候補を部門長が確認して決定する流れに変わります。

導入後の営業チームの1日

たとえば、複数の業界の顧客を担当する法人営業チームで、インサイドセールスから営業へ渡す案件に使い始めた場合を考えます。

ガラス張りの会議室で、複数の人が机を囲んで話し合っている様子
案件の割り当てを、部門長や担当者が確認し合う場面のイメージです。 Photo by Rodeo Project Management Software on Unsplash

朝、営業部門長は、前日の夜に入った案件の一覧を画面で確認します。画面では、各案件に推奨される担当者と確信度が表示されています。確信度の高い案件は、そのまま担当者に通知されます。

日中、新しい問い合わせが入るたびに、AIが担当者の候補を出します。インサイドセールスの担当者は、推奨された担当者に案件を引き継ぐ際、案件の背景を短くまとめて渡します。引き継がれた担当者は、初回の商談の前に、自分が選ばれた理由を確認できます。

夕方、営業企画は、その日の割り当てと実際の商談の進み具合を見比べます。AIの推奨を担当者が変更した案件があれば、営業企画は変更の理由を記録します。この記録が、翌週以降の判断の精度を高める材料になります。

朝、日中、夕方の3つの時間帯で、案件の割り当ての流れを順に示した図
図2:朝から夕方までの流れ。AIの推奨を見て、人が確認したうえで動きます。

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの答えには確信度が付きます。企業は、この確信度によって、どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するかを定めます。

  • 確信度95%以上:担当の条件が明確で、既存の顧客からの追加の相談のように、判断が定まりやすい案件です。AIが自動で担当者に割り当てます。
  • 確信度70〜95%:新しい業界の案件や、規模の大きい案件です。営業部門長が確認してから割り当てます。
  • 確信度70%未満:前例の少ない案件や、複数の部門にまたがる案件です。上長や専門の担当者が判断します。

この閾(しきい)値は最初から固定せず、PoCで検証して定めます。はじめはすべての割り当てを人が確認し、AIの推奨と部門長の判断がどの程度一致するかを見たうえで、任せる範囲を広げていく進め方が安全です。

確信度の0%から100%の目盛りを、70%未満、70から95%、95%以上の3段階に分け、それぞれの任せ方を示した図
図3:閾値はPoCで検証して定めます。影響の大きい案件は人の承認を前提とします。

小さく始める手順

いま使っているCRMは入れ替えません。AIはCRMの上に重ねる「判断レイヤー」として導入され、企業はまず手元のCSVから始められます。

  1. 担当者が、CRMから過去の案件(業界・規模・経過)と担当者の履歴をCSVで書き出します。対象は1つのチームや1つの商材に絞ります。
  2. 担当者が、AIの推奨と部門長の判断を机上で比較します。この段階では、実際の割り当ては変更しません。
  3. チームは、合意できた範囲から実際の振り分けに使い、指標の変化を検証します。

PoCの期間は3〜8週が目安です。チームは期間中に、次の5つの指標を測ります。

  • 案件の発生から担当者が決まるまでの時間
  • 初回の商談に至る割合
  • 商談から受注に至る割合
  • 担当者の変更(再割り当て)の件数
  • 担当者ごとの案件数のばらつき

目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから、クラスフォックスとチームが一緒に定めます。効果を確認できた範囲を広げ、他のチームや商材へ展開していく進め方です。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩になります。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。

データの用意、机上での比較、指標の測定、目標の設定という4つの手順を矢印でつないだ図
図4:既存のCRMはそのままに、一つずつ検証しながら進めます。

営業・CRMの判断を支えるほかのAI

営業の現場には、担当者の割り当てのほかにも、繰り返される判断があります。たとえば、今日どの案件から手をつけるかを示す「対応順位」の判断や、失注した案件の傾向を読み取る「失注AI」などです。どの判断から始めるかは、現場で判断に迷う時間が長い業務から選ぶのが近道です。

よくある質問

いま使っているCRMは入れ替える必要がありますか

入れ替える必要はありません。AIはCRMの上に重ねる判断レイヤーとして導入され、企業はまずCRMから書き出したCSVで始められます。

どのようなデータが必要ですか

過去の案件の業界・規模・経過と、担当者ごとの履歴が基本です。まずは手元にある範囲で始め、PoCの中で欠けているデータを確認します。

どのくらいの期間で試せますか

PoCは3〜8週が目安です。クラスフォックスと担当者は、週ごとに結果を確認しながら、進め方と任せる範囲を一緒に判断します。

トップ画像の写真:Photo by Rodeo Project Management Software on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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