NDAの修正要否をAIが判断する「NDA AI」で法務の確認を絞り込む活用シーン

この記事の要点

  • AIが、取引先から届いたNDA(秘密保持契約)について、修正が必要かどうかを確率と確信度つきで判断します。
  • 法務担当者が毎回全文を読む運用から、修正が必要なNDAに集中する運用に変わります。
  • 過去のNDAと審査結果をCSV(表形式のデータファイル)にして始め、3〜8週のPoC(本格導入の前に効果を確認する試行)で確認します。

NDA AIは、取引先から届いたNDA(秘密保持契約)の修正要否をAIが判断し、法務担当者が確認すべき契約書を絞り込むしくみです。クラスフォックスが設計した Vertical Decision AI SaaS の一つで、企業の法務部門や、顧問先の契約審査を担う弁護士事務所の判断を支えます。本記事では、NDAの審査の現場で起きていること、AIが判断すること、導入後の1日、AIに任せる範囲の決め方、小さく始める手順を順に紹介します。

NDAの審査で毎回全文を読む負担

新しい取引や共同の検討が始まるたびに、企業はNDAを取り交わします。多くの場合、取引先から届いた書面を法務担当者が受け取り、全文を読んで確認します。

机の上の書面にペンで書き込む手元
NDAの確認は、書面を一件ずつ読み進める作業の積み重ねです。 Photo by Scott Graham on Unsplash

届くNDAの大半は、自社の雛形とほぼ同じ内容の定型文書です。それでも法務担当者は、どこかに自社に不利な条項が紛れていないかを確認するため、毎回最初から最後まで読む必要があります。秘密情報の範囲、目的外使用の禁止、有効期間、契約終了後の秘密保持の期間、損害賠償、管轄裁判所などが主な確認点です。

この運用には2つの問題があります。1つは、件数が増えると、本来時間をかけるべき難しい契約に手が回らなくなることです。もう1つは、確認の質が担当者の経験や、その日の忙しさに左右されることです。事業部の担当者にとっては、NDAの返事を待つ時間がそのまま商談の待ち時間になります。

NDAの審査が、毎回全文を読む運用から、修正が必要なものに集中する運用へ変わることを示した図
図1:NDAの審査は、全文確認から修正が必要なものへの集中に変わる

NDA AIが判断すること

AIが判断するのは、そのNDAに「修正が必要かどうか」です。判断のパターンでいえば「リスク・異常の検知」にあたり、その問いは「危険か、異常か」です。契約書の中に、自社の基準から外れた条項があるかどうかを見つける判断です。

Decision AI は、文章を生成するAIではありません。業務の判断だけを、決まった型の答えとして、確率と確信度つきで返します。この業務では、次の3つの型で答えを返します。

答えの型この業務での問い
はい/いいえこのNDAは、自社の基準に照らして修正が必要か
どれを選ぶか修正が必要な場合、どの条項から確認するか
どの程度か各条項が自社にとって不利である度合い

答えが型で返るため、法務担当者は「どの契約書の、どの条項を見るべきか」から確認を始められます。最終的に契約を結ぶかどうかは、これまでと同じく人が判断します。

導入後の法務担当者の1日

たとえば、取引先との新規の打ち合わせが多い企業の法務部門を考えてみます。AIは、過去に審査したNDAと、その結果から自社の基準を学んでいます。

朝、法務担当者は、前日までに届いたNDAの一覧を画面で確認します。一覧には、修正要否の判断と確信度、不利と判断された条項の候補が並んでいます。法務担当者は、確信度の高い順ではなく、確認が必要なものから順に開いていきます。

日中、事業部から「至急で返事がほしい」と依頼が入った場合でも、法務担当者は一覧で内容を把握できます。修正が不要で確信度の高いNDAは、確認の手順を簡略にして先に返送できます。時間のかかる交渉が必要な契約には、その分の時間を割けます。

夕方、法務責任者は、その日にAIが判断した件数と、法務担当者がAIの判断を変更した件数を確認します。判断が食い違った契約書は、AIの基準を見直す材料として集めます。確認の基準が個人の頭の中だけにある状態から、組織で共有できる状態へ育っていきます。

導入後の法務担当者の1日を、朝・日中・夕方の流れで示した図
図2:導入後の法務担当者の1日(朝・日中・夕方)

AIに任せる範囲をどう決めるか

AIの答えには確信度が付きます。この確信度によって、どこまでをAIに任せ、どこから人が判断するかを定めます。

  • 確信度95%以上:自社の雛形とほぼ同じで、秘密情報の範囲や期間にも問題がないNDAです。自動で処理し、修正不要として扱います。
  • 確信度70〜95%:一部の条項の表現が雛形と異なるNDAです。法務担当者が、AIが示した条項を中心に確認します。
  • 確信度70%未満:見慣れない条項や、特殊な取引を前提とした条項を含むNDAです。法務責任者や、必要に応じて顧問弁護士などの専門家が判断します。
確信度の3段階と、それぞれの段階で誰が判断するかを示した図
図3:確信度に応じてAIに任せる範囲を定める

これらの閾(しきい)値は、最初から決め打ちにはしません。PoCで、AIの判断と法務担当者の判断を比較して定めます。契約書は、見落としが事業の損失につながり得る文書です。そのため、はじめはすべての判断を人が確認し、一致の状況を見たうえで、任せる範囲を段階的に広げます。

NDA審査のAIを小さく始める手順

企業が使っている契約管理のシステムや、共有フォルダの運用を入れ替える必要はありません。NDA AIは、既存の運用の上にのる「判断レイヤー」として入り、手元のCSVから始められます。

  1. 企業の法務部門は、過去に審査したNDAの一覧と、各NDAの審査結果(修正の有無、修正した条項)をCSVにまとめます。対象は、取引先の種類や契約の目的で絞ります。
  2. クラスフォックスは、AIの判断と、法務担当者の過去の判断を机上で比較します。この段階では、実際の審査の流れは変えません。
  3. 企業は、判断が一致した範囲から実際の審査に使い、指標の変化を確認します。

PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中は、次の5つの指標を測ります。

  • AIの判断と法務担当者の判断の一致の度合い
  • 修正が必要なNDAの見落としの件数
  • NDAの受領から返送までの日数
  • 法務担当者が1件の確認にかけた時間
  • 法務担当者が全文を確認したNDAの割合

目標とする値は、PoCの前に現状を測ってから、法務部門とともに定めます。業務の判断を一つずつAIに任せていくことが、AX(AIトランスフォーメーション)の現実的な一歩です。クラスフォックスの Vertical AI SaaS は、初期費用0円・月額10万円(税別)から、1業務単位で始められます。

PoCで測る5つの指標の一覧
図4:PoCで測る5つの指標

弁護士・法務の判断を支えるほかのAI

契約や法務の現場には、NDAのほかにも、毎日くり返される判断があります。判断の型は同じでも、見るべき条項や基準は契約の種類によって異なります。まずは件数が多く、定型に近いNDAから始め、手応えを確認したうえで、ほかの契約書の審査へ広げていく進め方が現実的です。

よくある質問

NDAの審査にAIを使うと、弁護士や法務担当者の判断は不要になりますか

不要にはなりません。最終的な判断が必要な業務は、人の承認を前提に設計します。AIは、確認すべき契約書と条項を絞り込む役割を担います。

どのくらいのデータが必要ですか

過去に審査したNDAと、その審査結果が基本です。まずは手元にある範囲のCSVで始め、不足するデータはPoCの中で確認します。

どのくらいの期間で試せますか

PoCの期間は3〜8週が目安です。期間中に結果を確認しながら、AIに任せる範囲を一緒に決定します。

トップ画像の写真:Photo by Scott Graham on Unsplash

本記事で紹介する活用シーンは、クラスフォックスが設計した活用構想です。効果は、貴社のデータを使ったPoCで確かめます。

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