clubhouseとは
音声版Twitterと言われる「clubhouse」が話題を集めています。
アーカイブ配信機能が無い音声配信SNSアプリとして、気軽に見知らぬユーザーとも会話を楽しめるアプリです。
現在はiOS版のみで、Android版は開発中とのことです。
2020年1月末から日本でも爆発的にユーザー数を伸ばし、メディアで取り上げられることも増えました。
当初は回線が乱れてしまったり、サーバーが落ちることも多かったですが2月上旬からは安定してきた印象です。
clubhouseが注目を集めた一つの理由として「完全招待制」は大きなキーワードです。FOMO心理 (Fear of Missing Out=取り残される不安、見逃すことへの恐怖) が刺激され、一気に火が付きました。
一時期のブームと比べると勢いは落ち着いてきた印象ですが、今後独自のポジショニングでFacebook、Twitter、Instagramのように日本でも定着していくのか考察していきます。
clubhouseの現在
ユーザーは自由にルームを作ることも参加することも可能で、そこで自ら情報を発信することも視聴のみでの参加も可能です。
「幸せな人生を送るには」という自己啓発系のルームや、「これからの日本を考える」という社会派のルーム、「これからのDXについて語りましょう」というデジタル系のルーム、「好きなアイドルについて語ろう」という趣味系のルームなどなど…多種多様。
中には「作業中ですが暇なので話しましょう」という、コロナ禍のリモートワークが増えている時期ならではのルームも目立ちます。
また、音声のみということで「声マネの集い」など、ユーザーがアニメや芸能人の声マネで会話を繰り広げるルームも人気が高いのもclubhouseならではの面白さです。
興味のある分野に精通したユーザーをフォローしておけば、そのユーザの立ち上げたルームや参加しているルームが表示されるようになるので興味のあるルームを発見しやすくなります。
流行り始めた当初は、ゲリラ的に色々な部屋が作られていたが、少しづつ各モデレーターの方針が固まり、配信の時間帯やメンバーも固定されつつあり、ラジオ番組のようなルームも増えてきている印象です。
clubhouseの魅力
clubhouseの魅力の一つが、リアルタイムの視聴のみであとから見返すことが出来ず、録音等も禁止されているため、トラブルになりにくい点です。
大人数が集まるルームではモデレーター(主催者)が、会話をうまく回してくれるので、参加型のラジオのような雰囲気ですが、少人数のルームでは放送事故のような無言時間が突然訪れたり、本来のテーマから外れた話になることも多々あります。そのようなどのような方向に進むか分からないライブ感もclubhouseの魅力です。
手軽に利用できる
動画やテキストに比べて音声だけのツールなので手軽に参加しやすいのが大きな魅力です。
仕事や家事をしながらの参加や、車の運転をしながら参加するなど、耳だけで参加できるため気軽に利用しやすいです。
バックグラウンドでアプリが動くため、他の作業をしながら使用することが可能です。
コロナ禍で人とのコミュニケーションの機会が少ない分、手軽に寂しさを紛らわすにはぴったりのツールです。
コミュニケーションが取れる
有識者の話を聞くという点では、ラジオやトークショーに似ていると思いますが、clubhouseでは手を上げてモデレーター(主催者)に選んでもらえれば、その場で質問等のコミュニケーションをとることが出来ます。
YouTubeやInstagramなどでもコメント等で自分の想いや考えを伝えることは出来ますが、リアルタイムで会話ができるというのはこれまで馴染みのなかった機能です。
また、発信者としても自分の発言に対してのレスポンスをすぐにもらえるので、リスナーの反応を見ながら会話の方向性を作っていきやすいように感じます。
荒らしが少ない
Twitterやヤフーニュースなどに比べると、文字でのやり取りではなく、音声での会話の為か「荒らし」が少ないように感じます。
音声であることで画面の先にいる人間を感じやすいということが理由の一つにありそうです。
しかし、誰でも気軽に参加できるため、悪意無く空気の読めない発言や不快感を与えてしまう方もいるので注意は必要です。
明確な荒らし行為でしたらモデレーター(主催者)の権限で発言をできなくすることは可能ですが、空気が読めないだけの悪意がないユーザーを冷たくあしらうことも出来ずに放置するしかないケースも散見されます。
ビジネスでの活用
課金制度の導入などがあれば参入する有名人も増えると思われますが、今のところそのような機能はありません。
しかし、現在でも自社商品をECサイトでの販売している事業者がルームを作りビジネスに活用している事例はいくつかありました。
例えば、スキンケアビジネスをされているユーザーが「肌荒れに関する相談ルーム」を作り、ユーザーの悩みにアドバイスをしながら自社商品を宣伝することにより売り上げを大幅に伸ばしたという事例もあります。
また、clubhouseのユーザー層とマッチするビジネス系の著者は、作品を知ってもらうチャンスとして、オンラインサロンのような活用をしている印象です。
本格的なオンラインサロンのような場にするためにはファイルの共有などの機能も必要になるので難しいかもしれませんが、認知度を高めるためのアプロ―チとして活用されている方が多いようです。
clubhouseはオワコンなのか?
clubhouseの魅力をご初回してきましたが、Twitterなどでは既にオワコンと揶揄する方もいます。
みちょぱさんや、藤田ニコルさんも「もうやっていない」と明言していました。実際に一時期のピークに比べてアクティブユーザは減っている印象です。
アーカイブが残らないことやライブ感を魅力とご紹介しましたが、同時にマイナスでもあるように感じます。
せっかく面白いトークを繰り広げていても、参加している人のみしか聞けません。しかし、そのためにトークを聞いていても盛り上がるかどうかは分からないのです。結果、最後まで聞いていても盛り上がらないまま終わるルームも多々あります。
それならばYouTubeのように他の方が評価している動画を視聴したほうが有益な時間を過ごせる可能性は上がるでしょうし、音声だけで楽しむのならばプロの話し手がトークを繰り広げるラジオのほうが質は高いと思います。
誰でも発言者になれるというclubhouseの魅力が日本人には合っていないように感じます。
日本人にとってのclubhouse
ブラジル在住の友人とclubhouseについて話したときに、日本での使われ方と違いがあるように感じました。
ブラジルでは発言するチャンスを増やすために、なるべく少人数のルームに参加していると言っていました。
対照的に日本では「聞き専」と言われるユーザーが多いので、なるべく多くのユーザーが参加しているルームのほうが安心感があるように感じます。
国民性ともいえるかもしれませんが、日本人の多くは見知らぬ人が多くいる場での発言やディスカッションが苦手だと言われています。
国はもちろん、人それぞれの個性は異なりますので一括りには出来ませんが、南米のようなトークへの積極性や、欧米諸国のような教育段階からのディスカッションに対する慣れと比較すると、日本人がSNSに求めるものはclubhouseと相性が良くないのかもしれません。
clubhouse疲れ
「mixi疲れ」「Twitter疲れ」「インスタ疲れ」など、これまで流行ったどのSNSでも、ストレスは付きものでした。
自分の生活をよく見せたり、フォロワー数でマウントを取りたがる人などは、どのSNSでも共通していますが、clubhouseならではの問題もあるようです。
clubhouseでは、お互いにフォローし合っていると、自分がどのルームに参加しているかがバレてしまう為、知られたくない趣味がばれてしまったり、生活の一部が除かれている気分になってしまうのだろう。
前述のようにアーカイブが残らないため、暇な時間に楽しもうとしてもそうはいかない。好きなタレントがいつどのタイミングで発信を始めるか分からないため、常に気にしていないと気が済まないという人もいるようです。
これまでも、短い文章と拡散力が魅力のTwitter、実名制が高くリアルな繋がりを反映させるFacebook、お洒落な写真で視覚的に楽しめるInstagram、豊富な動画編集機能や短尺動画を気軽に楽しめるTikTokなど、それぞれのSNSの特徴を理解して自分の生活に合った付き合い方を模索してきました。
今後も、音声だけで気軽に興味のある分野の人と繋がれるSNSとして一定数のユーザーには使用されていくのではないかと思います。
clubhouseの今後
そんな勢いの落ち着いてきたclubhouseですが、一定数のユーザーにとっては非常に魅力的な空間です。
語れるだけの経験や知識があるが発信を難しいと感じていた方、とにかくお話することが好きな方、共通の趣味で盛り上がれる友人が身近にいない方、などなど…これまでのSNSでは満たされなかった需要にマッチしています。
また、トークを楽しんでもらうために知識や会話力が求められるなど、clubhouseで注目を集めるための能力は、Twitterのような短い文章で人気を集めるためのセンスや、Instagramのような綺麗な写真を撮る技術とは異なります。
音声のみでの発信だからこそ、語れるだけの実体験や知識がなければ価値を感じてもらえません。
これまで他のSNSではいまいち伸びなかったが、clubhouseと相性の良い人気発信者も誕生してくるでしょう。
今後、clubhouseがどのような成長とポジショニングを見せていくのか注目していきたいと思います。