データから見る、DX(デジタルトランスフォーメーション)の市場動向[2021年版]

■概要(DXの定義と我が国企業の取り組み状況)

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に唱えた、「デジタル技術によって人々の生活に変革を起こす」という説が元になっています。

これまでのデジタル技術は、人間の手作業を効率化したり、大量のデータを処理したりすることがメインでした。つまり、業務を「効率」化することに主眼が置かれていました。

しかし、DXでは、単なるデジタル化ではなく、私たちの生活を変革するほどの技術及びその活用であり、「効果」に着目した取り組みであると言えます。

2020年12月28日に経済産業省から発表された「D X レポート2 中間取りまとめ(概要)」によると、我が国企業のDXに対する現状は、「95%の企業はDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない。先行企業と平均的な企業のDX推進状況は大きな差がある」としています。

【参考】経済産業省 D X レポート 2 中間取りまとめ(概要)

https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf

■DXの市場規模

DXの内容は、デジタル技術を活用した「ビジネスモデルそのものを変革するタイプ」と「従来業務を劇的に効率化させるタイプ」に分かれます。

しかし、どの程度変革や効率化をさせたからDXなのかという、明確な規定はありません。そのため、明確な市場規模の算出がしにくいという特徴を持っていますが、アメリカの調査会社の日本法人IDCJapan株式会社では、2020年のDX向けテクノロジー/サービスに対する全世界の支出額は、前年比で10.4%増加し、1兆3,000億ドル超になると予測しています。

【参考】IDC Japan 株式会社 

「新型コロナウイルスの試練にも関わらず2020年もデジタルトランスフォーメーションの成長は続く見通し」

https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46511720

■世界各国におけるDX市場動向

・アメリカ

IDC Japanの調査によると、アメリカはDX関連支出額が最大の市場であり、全世界の総支出額の約3分の1を占めていると言われています。

特に、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)といわれる巨大IT企業がDX市場を牽引しています。さらに、AmazonやGoogle、Microsoftなどの会社は、IT開発者むけのプラットフォームも提供しており、DXを側面からも支援しています。

・中国

アメリカに負けず拡大しているのが、中国のDX市場です。DX関連の投資が年々増加しており、さまざまな産業分野でデジタル技術を活用したディスラプションが起きています。

特に中国では、Eコマースが拡大しており、経済産業省が2020年7月に公開した報告によると、2019年度のBtoCのEC市場規模は、中国が1兆9,348億USドル(約204兆円)であり、第2位のアメリカの3倍以上で、世界第1位の市場を有しています。

また、今後は、農村部のEC利用が本格化に始まると考えられているおり、さらなる市場規模拡大が見込まれます。

・ヨーロッパ

ヨーロッパのうち、北欧がIT立国として有名です。さらにエストニアでは電子政府を志向し、ほぼすべての行政手続きがITによって可能になっています。「Skype」や「Spotify」などのサービスが生まれた地域としても著名です。

北欧では、バイオやITなど先端産業分野の集積地であり、EUも外国企業の投資先として注目を浴びています。スウェーデンではキャッシュレス化、フィンランドではMaaS(Mobility as a Service)の導入が進んでいます。

・アジア

ロイター誌によると、2025年のデジタル市場規模が、2019年の市場規模予測の1000億ドルの約3倍にあたる3000億ドル(約32兆円)になると予測しています。特にインドネシアやベトナムの電子商取引(EC)の拡大が理由であると言われています。

その市場の中でも、4割強の1330億ドルを占めるのが、東南アジア最大の経済国インドネシアです。そのうち、EC市場や、配車ビジネス市場、旅行サイト市場が最も拡大しているといわれています。

また、2020年7月29日、東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済担当相が、テレビ会議を開き、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を柱とする行動計画をまとめました。ASEANが一体となってDXの推進を行っていくようです。

■各種業界におけるDX市場動向

・製造業

スマートファクトリーやサービタイゼーション(モノのサービス化/アフターサービス)が積極的に行われており、特に近年、IoTを活用した生産現場でのデータ収集・可視化のためのPoC(概念実証)実施が急速に拡大しています。自社IoT活用技術で生まれたサービタイゼーションは、現状自社製品の保全業務の効率化が中心であるため、効果が分かりやすく、導入が進んでいます。

・金融

企業内においては、AIやRPAの活用により審査や事務処理業務の効率化や省人化が進んでおり、AI活用したロボアドバイザー資産運用も運用を始めています。

また、社外においては、FinTechビジネスにおいて、外部事業者とのデータ連携を行うAPIを活用した新規ビジネスの創出も活発化しています。

・流通

店舗の業務効率化や、新たな顧客価値創出に向けた取り組みが増えています。特に、RFID(ICタグを活用する無線技術)やモバイル端末、AR/VR技術を活用して、レジの省力化や無人化、在庫管理に活かしています。また、AIを活用したPOSやECデータの分析による販売促進などが行われています。

・情報通信

従来からの、ICTの技術を多くの企業に提供しつつ、近年は5G、IoT、AI、AR/VR、FinTechなどの新技術を駆使し、企業のDXを後押ししています。さらに、サイバーセキュリティ対策の高度化も期待されています。

・医療/介護

診断治療支援システムとして、画像処理技術を活用したAI活用画像診断支援や、遠隔画像診断サービス、IoTを活用した体調データの自動取得による医療体制の省力化・高度化、ロボット技術やAR/VR技術の活用による手術や教育支援システムの開発も活発化しています。

・交通/運輸

車の運行状態や道路状況、車同士や車とインフラの情報交換など、さまざまなデータを収集分析して新たなサービスが開発されています。また、ドライブレコーダーの映像データを活用した運転状況分析、ウェアラブルデバイスや車載カメラから乗務員の身体異常/精神障害を把握するシステムの開発、交通機関の検索・予約・決済をワンストップで行うMaaS(マース:Mobility as a Service)などへの研究が進んでいます。

■DXがもたらす市場の変化、他マーケットの変化の可能性

・既存市場で変わる「常識」

ウーバーテクノロジーズがタクシー業界に激震を与えたり、エアビーアンドビーが旅行業界に新たな変革を促したりしたように、DXは業界ごとに存在した「常識」を覆しつつあります。君臨してきたトップシェア企業も、DXの取り組み次第では、下位企業に転落する可能性をはらんでいます。

・新たなプレーヤーの登場と規制緩和

DXの持つ破壊的な革新のエネルギーは、既存業界からというより、DX技術を駆使して既存業界の問題点を解決する「新たなプレーヤー」からもたらされることも多くあります。その結果、行政の伝統的な規制も変化させていくきっかけになり、産業構造も転換させていきます。

■まとめ

調査データをもとに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の市場動向を見てきましたが、いかがだったでしょうか?DXはこれからの企業成長に欠かせない必須のテーマであるものの、我が国における取組みには遅れも見られるようです。

しかし、製品のライフサイクルが超短期間化し、業界や企業規模の大小を超えてライバルが出現する現代、さらにDXは差し迫った経営課題であると同時に、取り組み方によっては中小企業や異業種にも成長のチャンスがあることも、ご理解いただけたと思います。

今後もDX市場の動向を注視していきたいと思います。

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