【事例あり】物流業界におけるDXとは?

経済産業省による企業のデジタル化の波に押され、様々な業種でIT化やDX化の推進がおこなわれています。

そのなかでも、DX化があまり進んでいないと言われているのが物流業界です。

  • なぜDX化が物流業界で必要なのか
  • DX化を成功させている企業はどのようにDXを進めているのか
  • 物流業界のDX化にはどのような課題があるのか

今回の記事は、上記のような悩みや疑問をDX化に成功した企業の事例を紹介しながら解説していきます。

そもそもDXとは何か?

DXとは、AI・IoTなどのデジタル技術を活用し、企業の抱える課題解決や効率化による生産性の向上を目指し、デジタル社会での競争で負けない経済圏を作ることが目的です。

そのために2018年9月に経済産業省が「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」をまとめたことで、世間で話題になりました。

「2025年の崖」とは、DX化を進めずに2025年を迎えてしまった場合のシミュレーションを、以下の3つの流れでまとめた提唱です。

  1. 複雑化・ブラックボックス化した既存システムへの莫大な費用と人的コストがかかる
  2. 新しいデジタル技術へのリソースを割けず、デジタル技術の発展が望めない
  3. 世界とのデジタル技術の競争に敗北し、2030年までに12兆円の損失を受けてしまう

DX化は、上記のような結果を避けるために進めなければいけない重要な施策なのです。

物流業界のDX事例8選

物流業界の企業では、どのようにしてDX化を進めているのかを7つの企業を選定して紹介していきます。

紹介する企業は、以下の7社です。

  1. 富士通株式会社
  2. 日本電気株式会社(NEC)
  3. 株式会社日立物流
  4. 日本通運株式会社
  5. 株式会社アペックス
  6. Uber Japan株式会社
  7. 株式会社新栄組

それぞれ解説していきます。

事例①:富士通株式会社

富士通は、物流の現場に求められていることとして以下の3つを掲げています。

  1. 物流コストの50%以上を占めている輸送の効率化
  2. 効率化や省人化による生産性向上に向けた改善
  3. 作業量に応じた人員の確保と適正配置での運営

上記3つの課題を解決するために、現状の限られたリソースをどう最大限に活かせるかを思考し、デジタルシフトによる現場の生産性向上に努めました。

具体的には、以下のような施策を適用しています。

  • 共配マッチング
  • AIを活用した庫内最適化
  • AIを活用した庫内の最適要因の配置

共配マッチング

納品を完了させた車の長時間走行が多いので、空車率の低減化と積載量の向上が課題でした。

その課題に対し、全国エリアで複数荷主間の膨大な組み合わせの中から最適な共配をマッチングして積載効率を向上させることで、効率的な物流促進に成功しています。

AIを活用した庫内最適化

庫内での渋滞や滞留があり、作業時間の短縮化進める必要がありました。

そこで、AIの活用により、作業予定や作業の規則性から生産性を考慮した最適な作業指示を策定して高生産な管理を実現させています。

AIを活用した庫内の最適要因の配置

庫内作業員のシフト計画が属人的で、作業生産性を考慮した配置計画になっていないという課題から、AIを活用した最適な配置指示をおこないます。

作業者の特性や生産性に合わせた配置指示により、日単位で過不足人数がひと目で把握でき、効率的で生産性の高い作業配置を可能にしました。

事例②:日本電気株式会社(NEC)

NECは、物流を起点にしたサプライチェーンの最適化を目指す「NECロジスティックプラットフォーム」を発表しました。

loTやセンシング技術によって、モノの流れをデータ収集・分析をすることで最適な人員配置や物流配達の最適ルート、最適なサプライチェーンを実現する未来を目指しています。

また、ドライバー不足を解消するために自動走行するトラックや、5Gを活用した庫内の無人フォークリフトの自動運転など、今後もDXによる徹底した効率化を進めていくことも提言しています。

事例③:株式会社日立物流

日立物流は、DX化を進めることで、従来のビジネスモデルをコアにした新しいビジネスモデルを作り出しました。

物流だけでなく、「製造」「販売」を一体にした情報の分析と改善をはかり、より広いステークホルダーに好影響を与える提案です。

また、「物流」「商流」「情流」「金流」の4つの流れを束ねることで、サプライチェーンの最適化を進めています。

働き方改革でも、ジョブ型ワークへの切り替えや、AIやIoTなどを活用した省人化と自動化を標準的な働き方にする改革がおこなわれています。

事例④:日本通運株式会社

日本通運は、単純作業にDX化やRPAを積極的に活用しています。

2019年5月には、作業ロボット100台が稼働しており、2021年度には500台ほどの作業ロボットを導入し、作業時間の100万時間削減が目標です。

実際に、コンテナ貨物の通運業者への発注と支払いの業務を自動化させ、メールや印刷、作業計画から完了報告までも自動化させたことで大幅な作業効率化を成功させています。

また、経理分野でも納品書の生産業務を自動化させたことで年間で2万時間もの作業時間を削減しました。

事例⑤:株式会社アペックス

物流事業と物流のサポート事業がメイン事業のアペックスでは、労働時間の長期化に対する賃金水準の低下による労働人口の低下が課題でした。

そこで、働き方改革として日常業務のフローを一元化させたことで物流ネットワークと情報の共有がスムーズとなり、それに伴い労働環境と賃金水準が改善されました。

また、配達乗務員の点呼にITの点呼機材を導入したことで、日々の業務が効率化され労働環境の改善がなされています。

事例⑥:Uber Japan株式会社

タクシーでの配車をデジタル化させた、DXの代表的な例です。

事前に配車したタクシーが、どこにいて、誰が運転手なのかの情報が利用者に分かりやすく表示されるため、ドライバーの対応改善につながっています。

また、料金決済も事前にネット決済されるため、利用者を含めたサービス向上に貢献しています。

事例⑦:株式会社新栄組

運送事業の新栄組は、長時間の残業や在庫管理が最適化されていないことからの配達ミスなどで顧客サービスの品質が低下していました。

上記の課題解決のためにクラウドを活用したDX化に取り組み、在庫管理の効率化による残業是正と配達ミスがなくなり、顧客満足度を向上させることができました。

また、自然災害での倉庫被害の対応も効率化され、作業員の働き方改革につながっています。

物流業界のDX(デジタル・トランスフォーメーション)は進んでいない?

富士電機株式会社がおこなった「物流・倉庫部門のDX推進に関する意識調査」によると、物流倉庫部門でDXに取り組んでいる企業は、全体のわずか4%という結果でした。

そもそも、勤務先でDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が普及しておらず、全体で46%の企業が「あまり使われていない」と回答しています。

このような現状では、確かにDX化が進んでいない状況もうなずけますし、全体の32%の企業が「DXに取り組んでおらず、必要性も感じていない」と答えるのも納得の結果です。

しかし、DX化が進まなければ「2025年の崖」にぶつかってしまうことは、経済産業省が発表しています。

物流業界でのDX推進は急務とも言えるでしょう。

DX推進が物流業界の人材不足課題を解決する

物流業界全体の大きな課題は、人材不足です。

特にドライバー労働力の不足は深刻化しており、2020年度では約15万人が過不足しており、2025年には20万人の過不足が起こるとされています。

このような人材不足を改善できるのが、AIやIoTなどを活用したDXです。

作業の効率化や自動化を積極的におこなうことで、少ない人材でコストを最小限に抑えつつ、生産性を高められる環境構築が可能となります。

また、社会環境の変化や市場の変化に対し柔軟に適応していき、同業他社に負けない競争力を身に付けられるでしょう。

物流業界のDX推進に重要なことは?

物流業界では「DX」という言葉が普及しておらず、必要に感じないと回答する企業も多いのが現状です。

しかし、深刻な人材不足や急激な環境変化に適応するためには、その時代に合う柔軟な対応が求められます。

DX推進を自分ごととして捉え、社内の現状だけを注視するのではなく、周囲の市場の変化を敏感に感じとるアンテナが必要です。

現業を活かしつつ、さらに生産性を高めるためにもDX化の検討を進めてみてはいかがでしょうか。

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