海外DXの成功事例紹介(欧州・東南アジア・アフリカ篇)

はじめに

前回はアメリカや中国など、デジタル化として特に注目を集めている国を中心に取り上げました。

今回は第2段として、軸足を少しずらしてより幅広い国のDX事例を紹介できたらと思います。

何かご自身のビジネスに生かせそうな内容が一つでもご紹介できたら幸いです。

ヨーロッパ

エストニア

前回ご紹介したDX事例の通り、IT先進国と言えばアメリカや中国が筆頭ですが、ヨーロッパを深堀りすると、ITが根付いている地域が多くなっています。特に、北欧諸国では税金の徴収、教育や医療・福祉までデジタル化が浸透しています。

近年ではEUの体制が変化していくことにより、世界企業の欧州での事業体制の見直しが行われています。

そのことで、外国企業の提携先や投資先として新しい役割を担うようになってきています。

エストニアDX成功事例:X-Road

バルト三国の一つのエストニアは、電子国民制度やオンライン選挙の導入など世界最先端の電子国家として知られています。これらの行政サービスは、2000年に設立された電子内閣によって、現在まで常に改良を繰り返しながら進められてきました。

現在ではなんと、オンライン上で99%の行政サービスが手続き可能になっています。

エストニアの電子行政サービスの根幹の仕組みにX-Roadと呼ばれるものが使われています。

様々な情報システムやデータベースを連携させることで、大規模なデータの送信や複数の行政システムへのデータ入力、また情報システムでの複数検索などが同時に実行できるツールで、行政内の異なる組織間でも相互に運用できることがメリットです。

このため、エストニアの行政サービスは作業効率がよく利便性がとても高いため、一説では毎年約800年分強の労働時間を効率化できていると言われています。

また、設計段階の時点でシステムの拡張も念頭に入れられているため、新しいオンラインサービスやプラットフォームとの統合も可能となっています。

現在、この技術は国を跨ぎ、フィンランドやオーストラリアでも導入されており、その他日本にもこの仕組みを採用しようという動きがあり、多くの国の参考モデルになっています。

エストニアDX成功事例:国民ID

国民IDは日本でいうマイナンバーカードにあたります。

エストニアの国民IDの普及率は99%と非常に高く、ほぼ全ての国民が所持しており、このカードで個人を認証することで行政サービスを利用できるようになります。

またこのIDのメリットとして、行政手続き以外にも様々な公共サービスや民間サービスも利用することができます。(下記一例)

・処方箋の取得

・オンラインでの納税申告

・銀行口座へのログイン

・オンライン投票

・EU内での身分証明書

・健康保険証

このような幅広いメリットの享受も圧倒的な普及率の一助となっています。

参考:電子国家エストニア

参考:X-Roadとは何か

参考:Goodpatch Blog

オランダDX成功事例:農業×デジタル

日本では農業というと後継者問題などで耳にすることが多くなっています。

高齢者中心の昔ながらの業界で、デジタルとは離れているイメージが強いですが、そんな農業も世界的にデジタル化が進んでいます。

1980年代、オランダの農業はEC(EUの前身)間での貿易自由化によって大きく様変わりしました。

オランダはもともと日照時間が短く、土地も痩せているため農業に適した環境とは言えませんでした。そんな中、自由化によって他の加盟国から安価な農作物が大量に輸入され、国内農業が打撃を受けました。

そこでオランダは、国際競争力の高い農産物を生産するため、国を上げて効率的に付加価値の高い農業を行うためにスマート農業に活路を見出しました。

その結果、国連食糧農業機関の統計によると、2013年には、オランダの農産物の輸出額は909億ドルにまで上がり、アメリカに次いで世界第2位との農業大国となりました。

今では約8割以上の農家が農作物に与える肥料や水などを、自動制御システムを搭載したコンピューターを使って行っていると言われています。

アグリポートA7

アグリポートA7とは、オランダ北部にあるセンサーを搭載した巨大なビニールハウスで、トマトやメロンなどを栽培しています。

ハウス内のセンサーによって得られたデータが別の場所のオフィスに送られ、二酸化炭素濃度や温度、湿度に至るまで24時間体制で作物にとって最適な環境を保っています。

これにより天候に頼らず、年間を通して良質な作物を育てることができます。

さらに、従来の農業では肉体労働がメインでしたが、このICT技術を導入したスマート農業ではオフィスでの仕事がメインになっています。
そのため、今までの農業従事者とは違ったホワイトカラーの人材も集まってきており、新たな雇用も生み出しており、業界に新しい流れが出来てきています。

参考:SMART AGRI 世界のスマート農業成功事例に学ぶ

東南アジア

ベトナム

経済成長著しい東南アジア地域ですが、デジタル化も急速に進んでいます。

世界のユニコーン企業(創業してからの年数が10年以内、かつ企業価値評価額が10億ドル以上の未上場ベンチャー企業)数も日本が5社程度に対して、インド・東南アジアでは10倍の約50社も誕生しており、いかに東南アジア地域のスタートアップ界隈が活況しているかがわかります(※)。

また、東南アジアのスタートアップの特徴は、先進国で成功したビジネスモデルを自国に取り入れて展開する『タイムマシン経営』が主流となっています。これは、シリコンバレーなどに代表される技術力とイノベーションで変化を起こす技術開発型のビジネスモデルとは大きく異なります。

参考:スタートアップとテクノロジーの世界地図(※)

ベトナムDX成功事例:KAMEREO(飲食店向け食材調達サービス)

KAMEREOは日本人の起業家がベトナムで展開している飲食店向けの食材調達サービスのスタートアップ企業です。

ベトナムの飲食業界は日本と異なり、中小企業が家族経営が多く、食材の受発注業務がきちんと体系化されていないことが問題でした。

時間通りに食材が届かないことや、注文した内容が異なっていることも少なくないそうです。

そこで、この状況をビジネスチャンスと捉え、飲食店の食材管理の受発注をデジタルで最適化するシステムの提供を開始したのがKAMEREOです(18年6月)。それまでも、一般向けの食材提供サービスは存在していました。

しかし、飲食店向けに特化したBtoB向けのプラットフォームはベトナム初であり、その点でKAMEREOのサービスはそれまでのサービスとは一線を画しており、差別化に成功しました。

さらに、19年8月からは卸売や自社倉庫からの配送にも対応を開始。

現在数百の飲食店がシステムを利用しているほか、スーパーマーケットなどの小売店にも利用が広がっています。

日本の整理された仕組みやマニュアルを海外に持ち込んで定着させた非常に示唆に富む事例です。

参考:JETRO海外ビジネス情報

シンガポールDX成功事例:Trax

Traxは小売向けのデジタルマーケティングを提供する、シンガポール発のベンチャー企業です。

画像認識技術を使うことで、小売店の商品棚を撮影した画像を分析し、在庫状況や棚の上のシェア率をデータ化。そのデータをコカコーラやP&Gなどの大小含む消費財メーカーに提供しています。

メーカー側はこのデータをもとに、より正確な売れ行きや競合の状態を把握することができます。そこから販売促進やマーケティングに活用し、今まで以上に効率的に売り上げを伸ばすことができます。

また、店舗内にこのシステムを持つことで、今まで人が足を使い行っていた店舗監査などの業務の時間も大幅に短縮でき、その分営業などの他の業務に時間を割くことも可能となります。

消費財の売り上げのほとんどが物理的な店舗から上がっていますが、そこにデジタルサービスを導入した事例です。

参考:ITmediaマーケティング  リテールテック 店舗の棚を見える化

アフリカ

ルワンダ

経済的に発展途上の段階にあったアフリカ諸国ですが、近年ではデジタル化によって経済成長が進んでおり、21世紀はアフリカの時代になるとも言われています。Googleやフェイスブックなどの世界的メガ企業からも注目されており、世界企業の進出も進んでいます。

アフリカにおけるこれらのデジタル化によって、医療や教育などの基礎的なサービスが大きな広がりを見せており、現地の人々にとっても大きなビジネスチャンスとなりつつあります。

ルワンダDX成功事例:Zipline(ドローンでの医薬品配送サービス)

Ziplineは、ルワンダに拠点を置く米国のベンチャー企業でドローンを使った医療配送サービスを提供しています。

病院からオーダーが入ることで、飛行場のスタッフが医薬品や血液などを載せたドローンを発射し医療施設へ配送します。

ルワンダは“千の丘の国”と呼ばれるほど山や丘が多く高低差もあり、荷物を運ぶこと自体が容易ではない国です。さらに、主要な道路は整備されていますが、農村部などは未舗装な道が多く、雨などが降ってしまうとぬかるむなど、車での配送はさらに難しくなってしまいます。

しかし、このドローンサービスを展開したことで従来2時間かかっていた医療機関への血液の配送を15分に短縮することに成功しました。

現在では、ルワンダ一国をカバーする規模のドローンの物流の商業化に成功しユニコーン企業(※)入りも果たしています。

前回の日本郵便の奥多摩での配送サービスと同じくドローンの可能性を感じさせる事例です。特に発展途上国には、車での配送が難しい地域も多く、そんな地域を中心にこれからもますます広がっていくのではないでしょうか。

※創業してからの年数が10年以内、かつ企業価値評価額が10億ドル以上の未上場ベンチャー企業

参考:CNET Japan アフリカ現地レポート

ケニアDX成功事例:サファリコム(低所得者層向けモバイル決済サービスの提供)

サファリコムはケニアの通信事業会社で、ケニア電信・電話会社の一部門として発足しました。1993年に事業を開始し、1997年に民間として独立、2002年に公社化された企業です。

そんなサファリコムのデジタル分野での注目は、M-PESAという低所得者層向けのモバイルペイサービスです。

Communications Authority of Kenya’s (CA’s) の2020年の調査によると、ケニア国内のモバイル決済市場でのM-PESAのシェア率は約99%で独占的なシェア率を見せています。

M-PESA

M-PESAとは、携帯電話で送金できるサファリコムのモバイル決済システムです。

M-PESAの特徴は、銀行口座やカードを持つことができないユーザーも利用できることにあり、このM-PESAで口座開設をし、携帯電話での決済を行うことが可能となっています。

低所得者層が多く、銀行口座を持たない人が多いケニアでは、このシステムが普及したことで決済が容易になりました。そのことで彼らのビジネスへの進出が可能になり、新たな雇用やビジネスを生み出すことに成功しています。

この仕組みはケニア内外でも注目されており、国連の世界ビジネス・デベロップメント賞やケニアの銀行賞など、その他様々な賞を授与されています。

参考:JETROアフリカ成長企業ファイル

参考:Connecting Africa

まとめ

DXと一言で言っても、地域や国、成長フェーズによって大きな違いがあることがお分かりいただけたと思います。その土地その土地に適したサービスの提供に成功した企業が伸びており、その見極めが何より重要になります。

どうしても、DX超大国のアメリカや中国を意識しそのパワーに圧倒されがちですが、世界を見れば、今の日本の既存のサービスにデジタルを加えるだけでもビジネスとして充分通用する地域もあり、新たな可能性も見えてきます。

コロナショックからすでに1年経ちました。

この記事があなたのアフターコロナ、withコロナの時代の次の一手のお役に立てたら幸いです。

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