IT企業が取り組むSDGs活動とDX推進〜第4回〜

「IT企業が取り組むことのできるSDGs活動とDX推進」は、IT企業がデジタル技術を活用して、どのように社会課題解決に貢献できるのか?をSDGsと紐付けながら考えるシリーズです。

シリーズ第4弾となる本記事のテーマは”インフラ””産業”。”インフラ”や”産業”に関してどのような課題があるのか?IT企業はデジタル技術を活用してどのように解決に貢献できるか?について紹介していきたいと思います。

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とはどんな目標?

SDGsの目標9は、「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」ことをテーマにしています。

8個のターゲットで構成されており、ポイントを簡単にまとめると以下のようになります。

  • 高品質・信頼できる持続可能なインフラ*開発
  • 製造業成長促進
  • クリーン技術を活用し、産業の持続可能性を向上
  • 研究者増加イノベーション促進

(*)インフラ:電気・ガス・水道・交通・インターネット・電話・灌漑・金融サービスなど

インフラが整い産業が発展することで、以下のような社会が実現すると言われています。

  • 生産性向上による企業成長、雇用増加、
  • 水汲みなど生きるために最低限の活動を行う必要がなくなり、勉強や就労ができる
  • 個人の所得が向上し、医療や教育へのアクセス性が高まる
  • 経済活動による環境汚染が減り、人間を含む動植物の健康が守られる

インフラの整備は、持続可能な開発を促進し、地域全体を発展させていく上で欠かせないものです。また、持続可能な方法で産業を成長させていくことは、地球環境を守りながら、雇用を生み出し所得を高め、すべての人の生活水準の向上にも寄与します。より持続可能性の高い方法で経済活動を行うには、イノベーションが必要不可欠であり、経済活動の基盤固めと同時に、研究開発への投資にも取り組んでいかなければなりません。

”インフラ”と”産業”に関する国内外の課題

インフラと産業に関して国内外にどのような課題があるのか改めて確認しておきましょう。

世界的な課題

インフラが整備されていないことによって、企業の生産性は大幅に損なわれています。それどころか、安全な水や電気など生きるために必要最低限のリソースが整っていない人も多く、そもそも経済活動に参加できない人も多いのが現状です。

  • 世界人口の30%は、安全に管理された飲料水にアクセスできない
  • 世界人口の13%は、便利な電気サービスを利用できていない
  • 農村居住者のうち6割近く(約3億人)が、整備された道路を利用できていない(医療施設や教育施設へのアクセスを困難にしている)
  • 世界人口の85%が4Gを利用できる環境にあるが、20%しか”使用”できていない
  • インフラ未整備により、企業の生産性40%損なわれている
  • パンデミックによって製造業の生産量6.8%減少

日本の課題

日本においては、基礎インフラの課題はほとんどありません。しかし、災害を見据えたインフラ強靭化が不十分であることや、経済活動による環境汚染物質の排出については課題が残る状況です。

  • 二酸化炭素排出量世界5位(2020)
  • 頻発する自然災害(巨大地震・津波・噴火・大雨など)に対する減災措置不十分
  • 国別イノベーションランキングは15位(2019)と、世界的なプレゼンスは低下傾向にある

IT企業は「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成にどのように貢献できるのか?

では、IT企業はICTを活用して、どのように”インフラ”や”産業”の課題に貢献できるのでしょうか?

インフラ保全テック

IT企業は、インフラ保全テクノロジーの導入を支援することができます。インフラ保全テックとしては、以下のようなものがあります。

  • モニタリング(カメラやセンサーの情報を伝送し、リアルタイムで監視・管理する 等)
  • 劣化診断支援(カメラ付きロボットによる点検画像撮影、AIによる損傷箇所スクリーニング 等)
  • 予防保全/故障余地(カメラやAIで最適な修繕時期をアラームでお知らせ 等)

日本では国土交通省を筆頭にインフラ分野のICT化を進め、「事後保全」から「予防保全」へと転換が進んでいます。インフラ設備の破損・故障などを事前に防ぐことは、人々の安全な生活を守り経済活動を継続させることに直結します。また、「予防保全」は「事後保全」と比べるとコストを約50%削減することができるため、国や自治体は、限られたリソースを国や地域の発展のために有効に活用できるようになり、行政のデジタル変革を進めることにもつながります。

製造業の効率化・高付加価値化

ICT技術を活用して、製造業の効率化や高付加価値化をサポートすることもできます。IoTセンサーやAIを活用した品質管理の効率化・精度向上、3D設計やシミュレーションによる製品開発の高速化、製造ロボットによる省人化、需要予測による在庫最適化・売り逃がしの削減など、具体的な方法は多岐にわたります。

製造業発展の他産業への波及効果は大きく、製造業の雇用が1件増えると、他の部門で2.2件の雇用が生まれると言われています。また、製造企業にとっても、ICTを活用して効率化・高付加価値化が実現できれば、強みの強化にリソースを割くことができ企業価値の向上につなげることができるようになります。

炭素排出量の測定

IT企業は、各産業における炭素排出量の削減にも貢献できるでしょう。具体的な例としては、スマートメーターなどエネルギー使用量や炭素排出量を測定する機器、および解析技術の導入が考えられます。直接的に減らす訳ではありませんが、まずは現状を可視化することが重要です。

製造業は、日本の産業部門における炭素排出量の9割を占めています。二酸化炭素排出量は世界5位と上位に位置し、日本の産業界から排出される二酸化炭素を減らすことは世界全体の大気汚染を遅らせることにもつながります。環境経営を導入した企業にとっては適切にアピールすることで、最終消費者や顧客、取引先、投資家などからの評価が高まり運営資金の獲得や、売り上げアップ、企業価値の向上につなげることができます。

デジタルイノベーション

IT企業は、デジタルイノベーションのパートナーとして並走することも目標9の実現に貢献することになります。

デジタル技術を活用して製品やサービスに新しい価値を付与新しいビジネスの創出を促進することができれば、企業の成長だけでなく、経済発展個人の所得向上につながります。また、社員が持続的に働ける環境の創出や、環境に優しいサプライチェーンを開発することで、目標8である働きがいの尊重、目標13である気候変動への対応にも貢献することになります。企業としては、企業価値の向上につながり、変化が激しい状況下においても市場や投資家からの指示を得られ、ビジネスの持続可能性が高まります。

まとめ

この記事では、SDGs目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」について、IT企業が貢献する方法について検討してきました。産業特に製造業において、デジタル技術を活用した生産性向上や、イノベーション促進は、DXへの取り組みが喫緊の課題となっている日本において既に需要が高まっています。これは、変化の激しい未来で企業を存続させるために必要不可欠な取り組みである一方で、マクロな視点では持続可能な発展にもつながっているのです。

(参考資料)
UN:SDGs Report 2021
UN:About the Sustainable Development Goals
UN:Sustainable Development Report
全国地球温暖化防止活動推進センター
NEDO:オープンイノベーション白書 第3版
国土交通省:「予防保全」の展開に向けた取組
国土交通省・経済産業省:ICT、データ活用等による戦略的インフラメンテナンス等
総務省:情報通信白書
経済産業省:製造業を巡る動向と今後の課題
産業部部門におけるエネルギー起源CO2

(SDGs活動とDX推進シリーズ 記事一覧)

DXプロジェクトマネジメント教育のお問合せ

当メディアを運営するクラスフォックスは、DXプロジェクトに関する多くの実績があります。

一言でDXといっても多数の技術要素が絡み合います。これまでの単純なデジタル化ではなく
ツールの選定から開発運用、組織の課題、ビジネスモデルの課題、様々です。

それらのエッセンスを凝縮した「DXプロジェクトマネジメント教育」を
個人・法人様に研修講座・セミナーにてご提供しております。

 
DXプロジェクトマネジメント教育のお問合せはこちら